Odd-even first discard
ディフェンス側の「最初のディスカード」で出すシグナルです。
奇数カード:カモン・シグナル(エンカレッジ)
偶数カード:ノンカモン・シグナル(ディスカレッジ)
さらに偶数カードはノンカモンと同時に、スーツプリファランスを表します。
「2」、「4」はランクの低いスーツへのプリファランス、
「8」、「10」はランクの高いスーツへのプリファランスです。
強弱は以下の通り。
よりディスカレッジ ← → よりエンカレッジ
2 4 6 8 10 9 7 5 3
奇数カードのほうが枚数が少ないので、「カモン」を出すときに、
このスーツではない別のスーツから適当なカードを探すこともあります。
また、「カモン」を出したいけど偶数カードしか無いときには
「2」よりも「10」を選び、
「ノンカモン」を出したいけど奇数カードしか無いときには
「3」よりも「9」を選ぶという要領です。
奇数カードを立て続けにプレーすると、エンカレッジをキャンセルして、
ディカレッジの意味になります。
このシグナルのコンベンション(リードとシグナルの約束も「コンベンション」
といいます)について、米国のウルジー(Kit Woolsey)が
“Modern defensive signalling in contract bridge”という本を
一般向けに著したのが1981年。
ブリッジのトップレベルではこの手のシグナルは20世紀に研究され
尽くされています。
一般レベルに於いても、オッドイーブン・ファースト・ディスカードは
流行りの時期を過ぎたようです。
米国ブリッジ連盟発行ブリッジ百科事典「エンサイクロペディア
(Encyclopedia of Bridge)」には以下のディールが載っています。
Southの4
に対して、Westは切り札をリード。
ディクレアラーは
を2巡狩り集めます。
このときEastは奇数カードの「
3」をディスカードして、
をエンカレッジ。
こののちWestは
Aを勝ち、
にシフトして、コントラクトをジャストメイク
におさえます。
Eastは「
AQ842」のときには
の奇数カードが無いので、
か
から
適当な偶数カード(偶数=ノンカモン、高い偶数カード=高いランクを示唆)
を見つくろってシグナルを出します。
先に紹介しましたウルジーの本には以下のディールが紹介されています。
Southの1NTオープンから始まり、ステイマンを経由して4
にコントラクト。
Westはスモール
をリードをした(とします)。
ディクレアラーはトランプを狩り集めます。
2巡目の
でEastは?
「
8」をディスカード。
の偶数カード=ディスカレッジ、高いカード=高いランク=
への
プリファランスを表します。
これを見てWestは
Aを取り、
にシフトしてコントラクトはワンダウン。
オッドイーブン・ファースト・ディスカードはこのような状況で絶大な効果
を発揮します。
Eastのディスカードは、高い偶数カードの
、低い偶数カードの
、
奇数カードの
、いずれもが
スーツへのプリファランスを表します。
手元のカードがこのいずれにも該当しないということはまず無いでしょう。
このようなときスタンダード・シグナルやアップサイドダウン・シグナルでは、
スーツに適当なカードが無いと効果的なシグナルを出すことができません。
もうひとつディールを紹介します。
マイルズ(Marshall Miles)著 “Defensive Signals”(1995年)から。
Southの4
に対してディフェンスは
を攻め続け、
ディクレアラーは3巡目をラフして、
A、スモール
と狩り集めます。
このときEastは?
ファースト・ディスカードで何かを表さなければなりません。
スタンダード・シグナルやアップサイドダウン・シグナルなら、
5枚目の
や
があったら、それを捨てれば済みます。
オッドイーブン・ファースト・ディスカードではそれが出来ません。
ハンドを知らない以上は
か
を捨てるわけには行かないので、
を使って何らかの意思表示をしなければならないということです。
このようにオッドイーブン・ファースト・ディスカードは、
ニュートラルなディスカードを失う傾向にあります。
また、早いウィナーと遅いウィナーは区別されません。
エスタブリッシュさせるスーツとエントリースーツも区別されません。
『パートナー間でどのようなシグナルの約束をしていても、潜在的な
ウィナーを捨ててまでシグナルを出さない。守らなければならない
アナーカードもまた、あくまで守らなければならない。これが常識』
ということで。
『直ちにシグナルを出すとか、シグナルを出す判断材料が揃ってから
シグナルを出すとか、わざとシグナルを出さないとか。オッドイーブン・
ファースト・ディスカードの約束があるときには、最初のディスカードの
ときに何かをシグナルしなければならず、それを拒むことができない』
とマイルズは書いています。
オッドイーブン・ファースト・ディスカードを使うには、
「オッドイーブン・シグナル」の知識が必要と思われます。
オッドイーブン・シグナルは一般ゲームでは使用を禁止されていますが、
ご参照ください。
リンク →
オッドイーブン・シグナル