これは「オッドイーブン・シグナル」の記事です。
JCBLの一般競技会では「オッドイーブン・シグナル」は禁止されています。
「オッドイーブン・ファースト・ディスカード」は使用可能です。
「オッドイーブン・ファース・ディスカード」については
リンク →
オッドイーブン・ファースト・ディスカード を見てください。
Odd-even signal
新しいものではなく。
1957年から1975年にかけて世界選手権を10回優勝した
イタリア・ブルーチームが採用していました。
「ローマン(Roman)・シグナル」という名前もあります。
仕組みは簡単。
奇数カード:カモン・シグナル(エンカレッジ)
偶数カード:ノンカモン・シグナル(ディスカレッジ)
問題は、カモンを出したいときに奇数のカードが手元にあるか、
ノンカモンを出したいときに偶数のカードが手元にあるか、です。
もたもたしながら奇数のカード(カモン)を出して、実はそれが
ノンカモンだったりして。
パートナーが「もたもた」を察知して、カモンのスーツを続けないで
他のスーツにシフトしたりすると、ディレクターを巻き込んでのトラブル
は避けられません。
規則は「ディフェンス側が通常の早さ(テンポ)でカードを出すこと」を
求めています。
従って一般競技会では「フォローにおけるオッドイーブン・シグナル」は
使用を禁止されています。
ただし。
「オッドイーブン・ファースト・ディスカード」は使用を認められています。
ディスカードのときに若干の時間をかけるのはあり得ることだからです。
「オッドイーブン・ファースト・ディスカード」については
リンク →
オッドイーブン・ファースト・ディスカード を見てください。
オッドイーブン・シグナル。
先のとおり、
奇数カード:カモン・シグナル(エンカレッジ)
偶数カード:ノンカモン・シグナル(ディスカレッジ)
です。
さらに偶数カードはノンカモンと同時にスーツプリファランスを表します。
「2」、「4」はランクの低いスーツへのプリファランス、
「8」、「10」はランクの高いスーツへのプリファランスです。
強弱は以下の通り。
よりディスカレッジ ← → よりエンカレッジ
2 4 6 8 10 9 7 5 3
「エンカレッジ」を出したいけど偶数カードしか無いときには
「2」よりも「10」を選び、
「ディスカレッジ」を出したいけど奇数カードしか無いときには
「3」よりも「9」を選ぶという要領です。
ディスカレッジは偶数カードを惜しげなく放出できますが、奇数カードの
ほうが枚数が少ないので、エンカレッジを出すときには不自由すること
があります。
また、奇数カードを立て続けにプレーすると、エンカレッジをキャンセル
して、ディカレッジの意味になります。
米国のキット・ウルジー(Woolsey)著
“Modern defensive signalling in contract bridge”(1981年)
には以下のディールが紹介されています。

Southの3NTに対して、Westは

Kをリード。
Eastは

のディスカレッジ(ノンカモン)を出します。
Westからは

シフトや

シフトは9連敗を食らう可能性があるので、
通常は

にシフトするでしょう。このディールでは失敗です。
第1トリックに戻って。
Eastは「

8652」から「8」をフォロー。
偶数カードで

のディスカレッジを表すと同時に、

スーツへのシフトを
示唆します。
このように上手く行くこともあるのですが。
Eastが実は「

A」を持っていて、「

985」だとどうか。
「8」をフォローして偶数カードでノンカモンを表すのですが、

ではなく

スーツへのシフトを示唆すると受け取られてしまいます。
このように、ディフェンス側がシグナルの約束に都合の良いカードを
持っていないときをどのようにやり過ごすかが課題で。
たとえば。
「953」からディスカレッジを出したいけど、全てが奇数カードなので。
「9」を出して、「あまりエンカレッジでは無い」と意見表明します。
「K953」からエンカレッジは「3」を出して、曖昧さを回避します。
もうひとつウルジーの著作から。

Southの2

オープンを、Northが4

にレイズします。
Westはトップ

をリード。
Eastは「

Q82」からエンカレッジ(カモン)シグナルを探さなければ
なりません。
実際はクイーンを捨てれば良いのですが、現場でそれは無理でしょう。
ここは「

2」を出してみます。
偶数カード=ディスカレッジ、低いカード=低いランク=

を示唆します。
ビッド経過とダミーの眺めから、

シフトをプリファランスするのは変です。
従ってEastは

シフトではなく、適切なカード(奇数カード)が無いので
工夫してカードを出している。
実際は

を続けることを望んでいる。
このように「

2」が「工夫して出している」とWestに通じるでしょうか。
ここでディクレアラーの出番。
「

4」を出して、奇数カードを隠します。
Westの視点からは、Eastが「

972」、ディクレアラーは「

Q84」
の可能性もあります。
「

2」が正真正銘のディスカレッジ・シグナルのときには、Westは
点数的に

Aを期待。

にシフトしてEastが

Aで勝ち、

リターン
というディフェンスを構想するものと思われます。
もうひとつディールを紹介します。

Southの1

オープンののち、コントラクトは4

になります。
Westはトップ

をリード。
「

964」からEastのオッドイーブン・シグナルは?
「偶数カード=ディスカレッジ(ノンカモン)」、さらに

にプリファランスが
あるので、「6」を出します。
そこでディクレアラーは?
「

2」をフォローします。
この出方はWestの視点からは、Eastが「986」から

シフトを示唆
するシグナルを出している可能性があるように見えます。
このようにディフェンス側がオッドイーブン・シグナルを使っているときには。
ディクレアラーは奇数、偶数のカードを隠したり、
低い偶数カードや高い偶数カードを隠すことで、
ディフェンス側の情報交換を阻害することができます。