世界選手権(1991年・横浜)デイリーブリテン No.8(10月6日号)より。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
The Magnificent Seven (by Mark Horton)
黒沢明の傑作「七人の侍」と同名のユル・ブリンナー主演の西洋版(邦題「荒野の七人」)は
誰でも知っているでしょう。しかしここでの話は映画のことではありません。
これはチームという異名のついている英国の大酒飲みのブリッジプレーヤー達が、

7に特殊な意味を持たせた話です。
彼らは、リチャード3世とヘンリー7世の戦いで知られるボスワード平原にある
マーケットボスワード村のレッドライオンというパブの常連でした。
月に一度、このチームは24ボードのチーム戦の挑戦を受けました。
しかし、この試合には特殊なルールがあったのです。
<ルール1>
プレーヤーがジョッキ1杯ビールを飲む度に、自分のサイドに1IMP加える。
<ルール2>
さらに

7の魔力を加える。最後のトリックをこのカードで勝つと、
そのディクレアラーは他の全員からビールをジョッキ1杯おごってもらえる。
そしてさらに7IMP得点できる。だが、

7で勝てるにもかかわらず勝たなかった場合、
残りの7人にビールをおごらなくてはならない。(しかしIMPは1点しか失わなくて済む)
この罰則は第1トリックに

7をリード、あるいはプレイしたディフェンダーにも
適用される。
このルールは、スーツ・コントラクトでしかも

が切札でない時にしか適用されない。
もうおわかりのように、このチームのメンバーになる為には、
まず大量のビールを飲める事と、さらにスーツをフォローする時にも特定のカードにだけは
注意を払うだけの能力を要求されるのです。
ほとんど2年間にわたってこのチームは勝ち続けましたが、それと同時に
プレッシャーも非常に高いものとなり、他チームの挑戦を受けるのは次で最後にしようと
いう事になりました。最後の試合の相手はたいへん手ごわいチームでした。
すさまじい大酒飲み達だったのです!
この試合は、終始大接戦でした。(1ボード毎にビールをジョッキ1杯飲むのです)
しかし、挑戦チームが徐々にリードしてきました。
そして最後のボードがやってきた時、その差は23IMPに拡がっていました。
ディーラー S、NSバル
両方のテーブルともコントラクトはSの6

で、オープニングリードは
どちらも

Qでした。挑戦チームのディクレアラーはトランプを狩り、

を出しました。Eが

Aを2巡目に取ったので、コントラクトは1ダウンしてしまいました。
しかし大酒飲みチームのディクレアラーはもっとよく考えました。
オープニングリードを

Kで勝ち、トランプを狩り、

Aを取りました。
次に

8を出すと、Wは

9、ダミーは

10、Eは

2を出します。
次にダミーから

を出してハンドでラフし、

A

Kをキャッシュし、残りのトランプも取ります。
ダミーには

K7と残り、ディクレアラーが

5でイグジットすると、Eは

Aで勝ちますが、
最後のトリックはダミーの

7が勝つ羽目になってしまうのです。
(追加図↓。編集部より)
このディクレアラーのプレイは、「普通の」17IMP プラス
最後のトリックを特別な

7で勝った「ボーナスの」7IMPを獲得しました。
そしてこの試合も1IMP差で勝つことが出来たのです!
この試合には余談があります。Eが第12トリックに

Aをダックしておけば、
貴重な7IMPを取られずに済んだのです。そうしておけば、さらに全員から1杯ずつ
ビールをおごってもらえたのです!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(注)本記事は、「ちょっとブリッジタイム」(=通称「ちょブリ」)
Vol.9 NO.2(Winter, 2002)に掲載したものと同じです。