米国「ブリッジ・ジャーナル(The Bridge Journal)」誌は
1963年9月から1966年12月号まで、ほぼ月刊で合計30号発行
されました。大きさはJCBL会報くらい、毎号50ページ位です。
編集長はルーベンス(Jeff Rubens、1941-)。若手ブリッジ・
プレーヤー達が無給で記事を書き、刊行を手伝った雑誌です。
編集員にはベッカー(B.Jay Becker、1904-1987)、イーウェン
(Bob Ewen、1940-)、カンター(Edwin Kantar、1932-)、
トラスコット(Alan Truscott、1925-2005)。ブリッジ問題の
パネル回答者にはウルフ(Bobby Wolff、1932-)、ローレンス
(Mike Lawrence、1940-)、ウールジー(Kit Woolsey、1943-)、
ケヘラ(Sami Kehela、1934-)など、のちの大御所達の名前が
並びます。初期の印刷はタイプライター印字による謄写版
(ガリ版)でした。
いわゆる「ジャーナリスト・リード」はこの誌上で議論が重ね
られ考案されたオープニングリードの約束です。現代ではかなり
一般的になった、スーツコントラクトに対して「長さが偶数枚の
スーツからは3番目、奇数枚のスーツからは一番下(third-from-
even, low-from-odd)」という約束はジャーナリスト・リード
から来ています。
参考 →
Third and lowest 「ブリッジ・ジャーナル」誌上ではビッド、プレー、ディフェンス
の技術的な議論だけではなく、対戦方式のムーブメント、ブリッジ
テーブル上のマナー(ethics)、ペアの約束事を対戦相手に公開する
原則(disclosure)など、運営や規則に関する議論も活発でした。
1965年の10月号には「外国為替(foreign exchange)」と題して、
外国のブリッジ刊行物の仲介案内が出ています。英国ブリッジ
マガジン誌、スウェーデン、オランダ、イタリアのブリッジ
月刊誌とともにJ.C.B.L.BULLETINが紹介されています。編集者
はウォンさん(John Wong)、5.75×8.25インチ(約15×21センチ)、
全24ページと紹介されています。現在75歳くらいの方なら当時は
20歳なので、大学のブリッジクラブのOBの方などは覚えていらっ
しゃると思います。
この「ブリッジ・ジャーナル」誌の全30号は、CD版でブリッジ
ワールド社から発売されています。マーテル(Chip Martel)が
「ブリッジワールド」誌の2016年10月号に書評を寄せています。
「ブリッジ・ジャーナル」誌は初刊から3年後の1966年12月号を
もって廃刊となりますが、その内容は翌年1月号からカプラン
(Edgar Kaplan、1925-1997)が編集長を務める「ブリッジ・ワー
ルド(The Bridge World)」誌に引き継がれます。
当時のスタンダード・アメリカンはゴーレン(Charles Goren、
1901-1991)の考案した「ゴーレン」システムでした。この
システムが発表されたのは1944年頃で、概要は「4枚メジャー
オープン、1NTは16-18、ストロング2(ツー)オープン」でした。
JCBLから1978年に出版された「基礎ブリッジ」もゴーレン方式を
踏襲したもので、2000年頃までは日本国内の大多数の人がこの
システムを使っていました。
1960年頃でも米国の先進的なプレイヤーはビディングシステムに
「カプラン・シャインワルド」や「ロス・ストーン」を選んでい
たものと思われます。英国の「エコール」システムやイタリアの
各種「ストロング・クラブ」システムが改良を重ねていたのも
この時期です。「プレシジョン・クラブ」システムが登場するの
はもう少しあとのことです。
「カプラン・シャインワルド」は、カプラン(Edgar Kaplan、
1925-1997)とシャインワルド(Alfred Scheinwold、1912-1997)
が1958年頃に考案したビディングシステムです。ウィーク(weak
=12-14)1NT、5枚メジャー、フォーシングNT、ウィーク
(weak)2・オープン、インバーテッド・マイナーレイズ、
ネガティブ・ダブルなどを標準装備し、ペア間の約束でウィーク
(weak)・ジャンプシフト・レスポンスを採用しています。
「ロス・ストーン」はロス(Albin Roth、1914-2007)とストーン
(Tobias Stone、1919-2012)が1953年頃に考案したビディング
システムです。5枚メジャーオープン、フォーシングNT、
1NTは16-18、ウィーク(weak)2・オープン、ネガティブ・
ダブル、ウィーク(weak)・ジャンプシフト・レスポンスなどを
採用しています。
というわけで、そろそろジャンプシフトの話題に入ります。