2007年に出版された「エキスパートのようにプレーでき
るようになるには (How You Can Play Like an Expert -
Without Having to be One)」。
この本には「メルの法則」と称して、ビッドの判断を助け
るガイドラインが提示してあります。
著者のメル・コルカミーロ(Mel Colchamilo)は当年74歳。
40代前半にブリッジの先生になった人で、前職はニュー
ヨーク証券取引所に勤める金融経済の専門家であったよ
うです。奥さんのジャネットと組むコルカミーロ夫妻は、
2000年の全米スイスチーム選手権で優勝するなどミック
スド(男女混合)として名の売れたペアです。私も米国内の
大会で対戦したことがあります。
また、メル夫妻とよくチームを組んでいたスティーブ・
ブルーム(Bloom)は数学の教授ですから、この本の執筆に
あたってのコンピュータ・シミュレーションを担っている
ものと思われます。
この本の7ページ目に以下のハンドが載っています。
コントラクトは2
。
Eastはメル先生、Westは生徒さんです。
最後の4枚で、リードはWest。
コントラクトは「4-3」の2
で、ディクレアラーの
手元に4枚目の
が残っていることは皆が知っています。
は13枚が出切っています。
この最後の4枚で、リードはWest。
正しいディフェンスは、
を出してダミーに張り付け、
ダミーからの
リードで、WestがAQを取ります。
ところが生徒さんは「
A」を取ってから、
を出した。
終了後に、何故そうしたのか先生が聞いたところ、いま
Aを取らないと、エスタブリッシュした
でルーザー
を捨てられると思ったと。
先生は指折り説明します。
最後の4枚ですね。
ディクレアラーの手元に
が1枚あることは判っているね。
残りは3枚。
は13枚が出切っていると知っていますね。
ダミーの
Jがエスタッていることは判っていますね。
ダミーの
Jが取れたら、ディクレアラーは手元から何か
を出しますね。
すると
が2枚残るから、
AQが取れるね、と。
メルは訴えます。
「恐れから」ディフェンスしているのであって
「思慮から」ディフェンスしているのでは無い
(defended out of fear, not out of thought)、
悲しい事実
(The Sad Truth) ブリッジは数えるゲームである
(Bridge is a counting game) と。
この本は300頁近くありますが、メル・コルカミーロはこれ
が一番言いたかったのであろうことは、私、同業者として
よくわかります。
先生や本から学んだ「ビッド」は全然出てこないのに対して、
「プレー」や「ディフェンス」は常に判断が求められます。
そしてエラーが出るのは、ほとんどがディフェンスでして。
年末の試合に以下のディールがありました。
ディーラーEast、EWバル
オープニングリードは
2。
ディクレアラーはシングルトンリードと判るので
Aで勝ち、
Aを取って、
5を出します。
Westから
J、ダミー
Qと進んで、Eastの
Kの勝ち。
ここでEastは「
K」を取ってしまったので4メイク。
Kを取りはぐれることを恐れているのでしょう。
“out of fear”の一例と思われます。
法則、あるいは法(2) に続きます。