ウィルスモア(Avon Wilsmore)の著したブリッジ不正行為を摘発
する書物「アンダー・ザ・テーブル(Under the table)」。
このなかでイタリア・ブルーチームの怪しいアクションは何百と
あげられていますが、私の目を引いたのは以下の5ハンドです。
1958年 世界選手権 予選
ディーラーWest、双方バル
W | N | E | S | |
P | P | 1 | P | 1NT | P | 2 | P | 2NT | P | 3 | P | 3NT | DBL | All | Pass | | | |
|
N:Becker
S:Crawford
E:Siniscalco
W:Forquet
いかに60年前でもこのビッドはひど過ぎる。
この世界選手権に於いてもブルーチームは優勝しています。
1964年 世界選手権 決勝
ディーラーWest、NSバル
このペアは「リトル・ローマン(Little
Roman)」、通称「アルノ(Arno)」と
呼ばれるビディング・システムを採用
していました。「カナッペ(canape)」
と言われる方式により、短いスーツか
らビッドを開始します。オープナーは
スーツ、レスポンダーは
スーツか
ら始めています。オープナーが長い
スーツを紹介したときは
すでに4の代。もはやエースとキングの枚数を訊くしか手立て
が無くなっています。
反対テーブルでは米国チームのジョルダン(Robert Jordan)と
ロビンソン(Arthur Robinson)が簡単に7
をビッド&メイク。
この世界選手権に於いてもブルーチームは優勝しています。
1965年 世界選手権 決勝
ディーラーWest、双方バル
W | N | E | S | |
P | P | P | 1 | P | 1 | P | P | DBL | 2 | 2 | 3 | P | P | 3 | P | 3 | All | Pass |
|
N:Erdos
S:Petterson
E:Forquet
W:Garozzo
「1
−P−1
」と来て、本来ならEastが何かを言うはずです
が、実際はWestがテークアウト・ダブルをかけています。
ブルーチームはスクリーンが採用されるまでは、テークアウト・
ダブルをかけて失敗したことはただの一度も無いということです。
対戦相手、北米チームのエルデス(Ivan Erdos)とピーターソン
(Kelsey Petterson)は有名ではありませんが、チームメイトは
レベントリット(Peter Leventritt)、ヘイデン(Dorothy Hayden)、
ベッカー(B. Jay Becker)、シェンケン(Howard Schenken)と
いう豪華ラインアップ。
もちろんこの年もブルーチームは優勝しています。
1967年 世界選手権決勝 第1セグメント 15番ボード
ディーラーSouth、NSバル
N:Murray
S:Kehela
E:Garozzo
W:Forquet
この「4
」って凄いと思います。
ノンバルの5
は、NSの4
をサクリファイスする予定でしょう。
オープニングリードは
A、
4にシフトして
K、
A、
→Q→K→
2切、
を
6で切、
を
5で切。
AK、
を
8で切、
を
Qで切、
を
4切→
9上切→
10上切
と進んで3ダウンのマイナス500。
残念ながら? 4
は普通に
リードでワンダウンします。
反対テーブルでは、
W | N | E | S | |
| | | 1 | 3 | All | Pass |
|
N:Pabis-Ticci
S:D'Alelio
E:Kaplan
W:Kay
Westの3
が4メイクして、12 IMPの得失点になりました。
この年もブルーチームは優勝しています。
1971年 140ボード親善試合 於ラスベガス
イタリア・ブルーチーム 対 米国・ダラスエーシズ(Dallas Aces)
ディーラーSouth、EWバル
何で4
とレイズできるのか? 結果はジャスト・メイク。
1970年と71年だけはイタリアチームが活躍しませんでした。
これも謎のひとつです。
各国ブリッジ連盟や国際ブリッジ組織が、コントラクトブリッジ
の評判が落ちることを恐れて何事も無かったように振る舞ったの
は理解しますが。
もしブリッジの勝者の歴史が半世紀に亘って嘘で固められるとし
たら、どれほどの影響があるかは考えなかったのでしょう。
現代では企業の不祥事に於いてもすみやかに第三者委員会を立ち
上げ、調査、公表、再発防止策という措置を取らなければ存続に
かかわる事態に陥ります。ブリッジ界も同じと思います。