銀メダルをひっさげて凱旋したジャパン・ジュニアチームのこぼれ話。
予選 第4ラウンド 9番ボード
ディーラーNorth、EWバル
NS:ジャパン・ジュニア
EW:イスラエル・ジュニア
Southの3NTは「12-14」のつもり。
約束では「15-17」だったらしい。
Northは、ためらわず6NTへレイズ。
Eastは。ぎょっとしたでしょうが「パス」。
オープニングリードは
3で、速攻メイク。
反対テーブルは4
6メイク、11 IMPの取り。
この試合は 24対12 IMP。
20VP満点スケールの14.00VPでジャパンが勝ちました。
仮にこのボードがプッシュだと 13対12 IMPで10.39VP。
このボードは 3.61VPの価値があったということです。
それがどうした、といいますと。
世界選手権2017のジュニアチームの予選は
10ボード×8ラウンド、アベレージ80 VP、
上位8チームが予選を通過します。
最終結果は、
1位は114.04 VPで米国チームのぶっちぎり。
2位、3位ときて4位が90.42 。
5位は87.70、6位、7位、8位と来て、9位は85.26。
5位から9位まで「だんご」です。
ということで、このボードが無かったらジャパン・ジュニアの
予選通過が無く、当然にメダル獲得も無く。
とはいえ対戦相手がツイてることもあるわけですから、
自分達にツキがまわってくることもあるはずで。
数年前に世界選手権の決勝で「イタリア対オランダ」が続いたこと
がありまして。
負けたイタリアの選手が、オランダはツイてただけだと言ったら。
オランダの選手は、自分達が昨年に負けたとき決勝の全ボードを
検討したらイタリアはツイてただけと判ったから、今年は実力で
破ってやったと言い返してました。
ディールの話に戻りまして。
Eastは「ライトナー・ダブル」を知らなかったか理解していなかったか。
セオドール・ライトナー(Theodore Lighter、米国、1893-1981)の発案。
パートナーがオープニングリード予定者のとき。
スラムコントラクトに対するダブル。
1.切り札リードを禁止、
2.味方の表したスーツのリードを禁止、
3.よく考えろ、
と言っています。
仮にEastが「ダブル」をかけたとき。
W | N | E | S | |
| 1 | P | 2 | P | 2 | P | 3NT | P | 6NT | DBL? | P | All | Pass | |
|
6NTxに対するリードは。
切り札は無い。味方の表したスーツも無い。
普通ならアンビッドの
スーツをリードする可能性が高い。
「よく考えろ」、普通では駄目だ。
となると
か
か
スーツのリード。
「ダブル」をかけなければ出さないようなスーツは、
ダミーのファースト・ビッドスーツの
か、
ディクレアラーのファースト・ビッドスーツの
です。
オープニングリーダーは、
から
を出した可能性は十分にあると思います。
このようなとき、
のリードが来なくてスラムをダブルメイクされたら
どうするんだ?
ということを言う人がいます。大勢います。
実際に6NTをつくられてマイナス 990で 11 IMPを失ったわけで。
6NTがダブルメイクだとマイナス 1230。
反対テーブルが4
で 480ですから、13 IMP。
たった2 IMPしか変わらない。
気分が悪いだけで、失点はたかだか知れてます。
このビッド経過では「ダブル」をかけて示唆しないと、
のリードなど来るはずないし。
ライトナー・ダブル。
天才的発想と言えるでしょう。
今でこそ当たり前ですが、当時は周りの人々に受け入れて
貰えませんでした。
ダブルをそのような特殊な意味につかうことはインチキであると。
「アラート」という制度も無かった時代です。
ダブルの意味を、自分達だけが知っていて対戦相手に教えない
のはインチキだと。
時代が追いついていなかったのです。
理解されなかった天才。
訃報に際しての記事
ニューヨークタイムズ1981年12月19日がありました。
ではこの6NT。
リードが来たときのプレーは?
と
を9連勝して、最後の4枚。
Eastは
4枚と、
2枚を出して。
の3、4、5枚目には「
8、J、Q」を捨てます。
「
Qxx
A」と残したときには、
Aにスローイン(throw-in)すればダミーの
Jが取れる。
でもこのときには、Eastは「
A」を捨てれば良いはず。
Westが
Kを持っているからです。
しかも以下のハンドでは出来目が無い。
また、実際のEastのハンドでは、
のときに「
8、J、Q」を捨てるはずです。
ところが「
AKQJ8」ならライトナー・ダブルをかけるはず?
Eastはライトナー・ダブルを知らないのではないか?
等々。ディクレアラーが悶絶するハンドになりそうです。