8月に開催された世界選手権から。
卓抜したビッドのハンドを紹介します。
112チームの参加を集めたトランスナショナル・チーム戦。
多国籍チームで参加できます。
3日間、10ボード×15ラウンドの予選スイスののち、
ベスト8が準々決勝に。
48ボードのトーナメント戦に入ります。
プレー・オフ、すなわち銅メダルをめぐる3位決定戦。
チーム・ツィンマーマン(ZIMMERMAN):
富豪のツィンマーマンがノルウェーのヘルゲモ、イタリアの
ローリア、ポーランドのマーテンズ、フランスのムルトン、
イタリアのベルサーチ。これら超一流プロをモナコ公国に
集めて作ったチームです。
チーム・パーシィ(PERCY):英国のクローチ、ロブソン、ゴールド、
シンクレア、米国のジア、それにオランダのミヒェルセン。
準決勝でチーム・ツィンマーマンは、
中国とポーランドの混成チーム・ジンショウ(JINSHUO)に破れ。
チーム・パーシィは、
ポーランドチーム・マズルケヴィッチ(MAZURKIEWICZ)に破れ。
32ボードの3位決定戦に臨みます。その最終32番ボード。
ディーラーWest、EWバル
W | N | E | S | |
1NT | P | 2* | P | 3 | P | 4 | P | 4 | P | 4NT | P | 5 | P | 6 | P | 7 | P | P | P | | | |
|
West:Robson[英国]
East:Gold[英国]
North:Multon[モナコ]
South:Helgemo[モナコ]
2
はトランスファー、4
と4
はコントロール・キュービッド、
4NTはRKCB、5
は2枚のクイーン無し。6
はキングアスキングを
飛ばしているのでクイーンの所在を聞くグランドスラム・トライです。
ここでロブソン(Andrew Robson)は7
をビッド。
ビッド経過からキーカードと
Qは揃っているはずで、問題は
Q
であろうことは予測できます。
の5枚目で
の3枚目を処理して、
と
で6トリックを取れば13トリックに足りる。
7
は、4枚メジャーオープンの伝統の長い国のプレイヤならでは
のビッド判断と思います。4枚メジャーの発想というのは、極端に
言うなら「4-4フィットだろうと4-3だろうと構わない」というところが
ありまして。
7
は簡単にメイク。反対テーブルのコントラクトは7
で、結果は
ワンダウン。19 IMPが動きました。最終スコアは102 IMP 対 42 IMP
ですから、オーバーキル(over kill)といいますか。このボードは
結果的には勝ち負けに関係なかったのですが。
では7
を言われたゴールド(David Gold)の判断は?
「5=1=3=4」のハンドの形なのでパスしやすかったろうと。
じゃあ『仮に「5=1=2=5」だったらどうしたか?』
最近はSNSで本人にじかに聞くことができます。
ブリッジウィナーズ「トランスナショナルチーム戦でのグランドスラム」 ゴールド本人によると、
『7
ならプレーが有るが、7
はプレーが無いのできっとパスした。』
とのことです。
実際のオークションの様子はユーチューブで観ることができます。
ユーチューブ「トランスナショナルチーム戦プレイオフ・ビデオ」 NS側は考えることも無くパスばかりで。
1NTオープンから6
まで4分弱。
Westのロブソンは6
ののち、7
をビッドするのに3分弱、
Eastのゴールドはこの7
をパスするのに5分半。
1NTオープンから7
到達まで12分強。
シビれているのです。
NS側のムルトンとヘルゲモは、パスしかしていないのに、
ハンドを広げたり閉じたりしてオープニングリードに備えて
状況把握をしています。
Northのムルトンはビッドもプレーも早い「いらち」でして。
やることが無く、ポケットから小銭を出して数えたりしています。
7
に対して、オープニングリードは以下のハンドから:
即座に「
5」。パートナーのボイドを狙います。
K、
A、
ラフ、
Aと進み、プレーは30秒で終了。
ラウンドが終わって席を立つとき、椅子を戻すヘルゲモは偉い。
ブリッジ会場で行儀の良い人って多くはないです。