清水のブリッジブログ　

　　　　　はやりのＡＩ。アーティフィシャル・インテリジェンス。
　　　　　「人工知能」と訳されていますが、いまさら新しいものでもなく。
　　　　　マインドスポーツに関しては、1997年にIBM社の開発したディープ・
　　　　　ブルー(Deep Blue)がチェスの世界チャンピオンに勝ち越しました。
　　　　　とくにこの10年のＡＩの発達は著しいようで。
　　　　　将棋と囲碁が去年今年でコンピュータに負けてしまいました。

　　　　　ではブリッジではどうかというと？
　　　　　ブリッジはオークションからプレイ終了まで手数が多いですから、
　　　　　ミスをする可能性も高いです。長丁場での人間不利は間違いない
　　　　　と思われます。
　　　　　例えばブリッジの世界選手権(World Bridge Teams Championship)では
　　　　　予選1週間ののちベスト8、準決勝と進んで、決勝は大会の12日目、
　　　　　13日目、14日目です。キツい試合を戦ってきた選手達は疲労の色も濃く、
　　　　　集中力が途切れることもあります。

　　　　　コンピュータどうしが対戦するコンピュータ・ブリッジ世界選手権は
　　　　　昨年で第20回。毎年、世界選手権の会場で開催されていて、今年は
　　　　　フランスのリヨン市です。
　　　　　　　　リンク　→　World Computer-Bridge Championshipウェブサイト
　　　　　昨年は世界選手権はポーランド、ヴロツワフ市で開催され、日本から
　　　　　出場したマイクロ・ブリッジ(Micro Bridge)は決勝に進むも、フランスの
　　　　　Wbridge5に 162対156 IMPで惜敗しました。大会の様子は開発者の
　　　　　内田富夫さんがJCBL会報2016年11-12月号で紹介されています。

　　　　　64ボードの決勝で、最後の2ボードを残して日本が17 IMPをリードして
　　　　　いましたが、63番ボードでフランスが4

をデビルズ・クーでつくり、
　　　　　64番ボードでフランスの3NTに対するディフェンスがゲス(guess)に
　　　　　なりました。この最終ボードはオークションとディフェンスのシグナルの
　　　　　観点から興味深いものがあります。
　　　　　興味のあるかたは
　　　　　　　　リンク　→　2016年コンピュータブリッジ世界選手権ウェブサイト
　　　　　6日目の決勝をご覧ください。

　　　　　コンピュータブリッジ全般に興味のある方は以下をご参照ください。
　　　　　コンピュータブリッジ大会を第1回から取り仕切ってきた米国の
　　　　　アル・レヴィ(Alvin Levy)が、「ザ・ブリッジ・ワールド」誌に書いた記事を
　　　　　ウェブサイトにpdfで掲載しています。
　　　　　　　　リンク　→　「ロボットの理論と実践」(2015年7月号)
　　　　　　　　リンク　→　「ロボットの理論と実践Ⅱ」(2016年5月号)
　　　　　　　　リンク　→　「ロボットの理論と実践Ⅲ」(2017年8月号)

　　　　　以下は2016年の世界選手権大会ブリテン及びワールド・チャンピオン
　　　　　シップ・ブック2016に紹介されているディールです。
　　　　　ディクレアラーは対戦相手のハンドの強さからコントラクトのメイクする
　　　　　条件を考え、対戦相手のハンドの形から切り札のパーセンテージプレー
　　　　　を導き出しています。

　　　　　2016年コンピュータブリッジ世界大会準決勝

ディーラ

AQ6

K8732

QJ84

532

AQJ4

A653

J10984

105

J74

K107

AK98652

　　　　　ディーラーWest　双方バル

W	N	E	S
1	P	1	2
2	DBL	P	3
P	4NT	P	5
P	6	All	Pass

　　DBL ＝ハンドの強さあり、
　　　　　　　

4枚以上
　　3

＝

ストッパーあり、
　　　　　

ストッパーアスキング
　　5

＝エース1枚

　　　　　NS側はフランスのWbridge5、EW側はデンマークのShark Bridgeです。
　　　　　

Kのフィネスが成功するとしてウィナーは11個。
　　　　　

Qのオープニングリードから、

Kは右手にあるはずなので、
　　　　　

Aは左手に推定されます。
　　　　　1

オープンから

の長さは左手にあるので、
　　　　　

を走れば左手は

Aと

の4枚目でスクイズされるはず。
　　　　　ところが手元に入って

をフィネスしたのち、再び手元に戻って
　　　　　

を走らなければならないので、手元へのエントリーが2個必要。
　　　　　

の分かれが2-2なら、

AKが手元へのエントリーになります。
　　　　　ビッド経過から左手の

は5枚以上、

が3～4枚と想定されるので、
　　　　　

は2-2よりも3-1の可能性が高い。
　　　　　

10シングルトンか

Jシングルトンを期待することになります。
　　　　　以上から

リードをエースで勝ち、

Qをエースでオーバーテーク。
　　　　　左手から

10が落ちるのを確認して、

をフィネス。
　　　　　ダミーから

3を引いて、ここで。
　　　　　右手から

7。手元のスモール

でフィネスします。
　　　　　

Kで狩り上げ、

を走って最後の5枚。

K87

ダミー

AQ4

J10

K10

ディクレアラー

　　　　　手元の最後の

で左手を圧縮します。
　　　　　左手は

を捨てるとダミーの

を全勝されます。
　　　　　実際は

Qをディスカード。このときダミーからは

4を捨てる。
　　　　　続けて手元からスモール

を出すと、左手からエースが飛び出す。
　　　　　左手には

しか残っていないので、最後の3トリックは

AQと

Kが
　　　　　勝って6メイク。

　　　　　反対テーブルのコントラクトは3

で5メイクでした。
　　　　　なおこのディールは世界選手権のベスト8(準々決勝)と同時進行で。
　　　　　オープン、ウィメンズ、シニア、ミックスドの４種目32テーブルでプレー
　　　　　されていました。そちらの方の結果は、Southの3NTが17テーブル、
　　　　　Northの3NTでダウンが2、3

が7、5

でダウンが2、5

で6メイクが1、
　　　　　6

メイクが1、Eastの3

が2テーブルでした。

　　　　　コンピュータブリッジの将来については米国のウェブサイト「ブリッジ・
　　　　　ウィナーズ」でも色々な意見が出ています。
　　　　　　　　リンク　→　グーグルディープマインドはBBOロボットに勝てるか

　　　　　しかしながら。
　　　　　ＡＩにはコンベンションはつくれないだろうと、詳しい人に聞いてみたら。
　　　　　「できる」とのこと。
　　　　　ならば、あとは費用だけの問題でしょうか。
　　　　　碁の世界チャンピオンを破ったグーグル・ディープマインド社の
　　　　　「Alpha Go(アルファ碁)」はプログラム開発費を除いても、ハードウェア
　　　　　(機械)だけで10億円。サーバー等々の費用は3年分で30億円とか2年分
　　　　　で60億円とか言われているようです。
　　　　　日本のブリッジ界の市場規模は15～20億円と推定されますから、
　　　　　私には何かよくわからないです。