デイフェンスのシグナル。
ノートランプコントラクト専用。
オープニングリードされたスーツに対する好き嫌いを、
ディクレアラー側が最初に触ったスーツにフォローするときの
カードの高低で表します。
具体的には。
オープニングリードが出て、ディクレアラーまたはダミーが勝つ。
続けてディクレアラー側がいずれかのスーツを出して来ます。
そのスーツにフォローするとき。
オープニングリードのスーツが「来て欲しい」ときは HIGHを、
「来て欲しくない」ときは LOWをフォローします。
Southの1NTオープンをレスポンダーがゲームレイズ。
Westはスモール
をリード。
Eastのジャックをディクレアラーがキングで取り、
でダミーに渡ります。
このとき。
Westが「
9」でスミス・エコーを出す。
リターンが欲しい。
Eastも「
10」でスミス・エコーを出す。
が調子いい。
続けてディクレアラーは
をフィネス。
Westは
Kを取って、
を攻め続けます。
ディールを少し変えて以下のように。
3NTに対してWestはスモール
をリード。
ディクレアラーは
Kで勝ち、
でダミーに渡り、
をフィネス。
Westは
Kを取り、
でEastに入れて、
リターンを引き出します。
第2トリックに
がリードされたとき。
Westは「
9」でスミス・エコー。
リターンが欲しい。
Eastは「
2」でスミス・エコー。
スーツに良いものが無い、と。
ディールはACBL発行「ブリッジ百科事典(Encyclopedia)」、
SMITH ECHO の記事を参考に作成しました。
Southの1NTオープンをNorthが3NTにレイズ。
Westはスモール
をリード。
ディクレアラーはジャックで勝ち、
をフィネスします。
このとき。
Westは「
3」でスミス・エコー。
リターンはよろしく無い、と。
Eastは「
K」で勝ちます。
Kはスミス・エコーではありません。
「
3」を見たEastは、
にシフト。
ディールはキット・ウールジー(Woolsey)著
“Modern defensive signalling in contract bridge”
を参考に作成しました。
以下のような状況では、スミス・エコーよりも、枚数を教える
「カウントシグナル」が優先されます。
W | E | 1 | 1 | 2NT | 3NT | P |
|
ディフェンスとしては、
Aがディフェンス側の手中にあるとの前提で。
Aの無い側は、
の枚数を教えるカウントシグナルを出します。
Aを持つ側は、
Aを取るタイミング(2巡目か3巡目)をはかります。
Southの1NTオープンをNorthが3NTにレイズします。
Westのオープニングリードはスモール
。
Eastは「
Q」でサードハンド・ミドル(middle)。よくある手口。
Eastは11点なので、パートナーが弱いハンドであると判っています。
Aを取って、
を返すと、キングをホールドされてしまいます。
そこで
Qを出して、ディクレアラーにキングを取らせる。
もちろんリードがキングのアンダーリードならクイーンが勝ちます。
ディクレアラーは、ノートランプではエースのアンダーリードのことも
あるので、
Kを取らないことはまず無理でしょう。
続けてディクレアラーは手元から「
10」を出してダミーのエースで勝ち。
おっと。
Eastとしては自分が
Qで勝って、
を返すつもりだったのが。
違う展開に。
ディクレアラーは、ダミーから
を引いてダブルフィネスします。
Westが
Qを勝って、ここで?
スモール
を出せば良いのですが、そんな都合の良い話があるか?
それより。
Aが勝ったとき、Eastはどのカードをフォローしたのでしょう?
「
が来て欲しい」
これを表すカードは「
6」です。
スミス・エコーです。
Westは「
6」を高い
と気付くか?
ディクレアラーは「102」ダブルトンなら、わざわざ「10」を出して
を
弱くすることはしないでしょう。「K102」なら、「2」を出すか、「K」を
取ってから「10」を出すか。いずれにしても最初から「10」を出して
エースで取るのは、
スーツでウィナーを増やす意思が無いはずです。
従ってWestから見ると、Eastには「6と2」があって、そこから「6」を
選んでいるということになります。
ところでWestの側はどの
をフォローしたのでしょうか?
リターンを強く希望したり、シフトを強く希望するなら困らないでしょうが。
現場では「微妙」ということも多いと思われます。
通常の想定くらいの強さからリードしたなら「リターンせよ」と出すのでは
ないかと思われます。
この点からロバート・ハマン(Hamman)はスミス・エコーを、問題のある
シグナルと語っています。躊躇してカードを出すと「リターンが微妙」と
パートナーに教えているようなものだからです。
これを予防するには、第1トリックに考えておくことが必要です。
このディールではディクレアラーが
リードを勝ったら、続けて
か
を
出してくると予測できます。
なら何を出す、
なら何を出す、と決めて
あれば、もたつくことは無いはずです。
スミス・エコーも完璧ではありません。
ディクレアラー側はたいていは長いスーツを触ってきますから、
ディフェンス側はそのスーツが短いことが多いです。
スミス・エコーを出そうとしてもシングルトンだったり、クイーンダブルトン
やジャックダブルトンで Hi-Loが出せなかったり。「43」ダブルトンで、
パートナーの側からは Hiなのか Loなのかが判らなかったり。
パートナーの側としても、エースをダックしたり、キングの3枚でダック
したりして、シグナルを確認する努力はするのでしょうが。クイーンの
3枚だとダックは出来ませんし。
はたまた。
ディフェンス側が、ディクレアラーの触ったスーツでカウントを出すことが
重要になっているかどうかが判らないこともあります。ダミーに散らばる
絵札がエントリーになっているかどうか、ディフェンスの片側からは判ら
ないときです。となるとディフェンス間で意思疎通の問題が起こり得ます。
しかしながら。
オープニングリードのスーツを続けるか他のスーツに替えるかは、頻繁に
起こる問題であり。スミス・エコーはノートランプコントラクトのディフェンス
に有効な取り決めであることは確かでしょう。
米国ブリッジワールド誌2016年4月号(32頁)に、
“Bridge World Standard 2017”
に関する統計調査結果が載っています。
ブリッジワールド誌の選んだパネリストに対する要求は:
「対戦したエキスパートがスタンダードスタイル・ビディングシステムを
使っているとき、
よく遭遇する取り決めは何か?」です。
質問701:スミス・シグナルは採用されてしかるべきか?
(Should the Smith signal be adopted?)
A.no 32%
B.yes 68%
スミス・エコーはそろそろ「標準装備」になってきたようです。
さらに。
スミス・エコーよりも「リバース・スミス」の方がより良いと言われています。
リンク →
リバース・スミス ご参照ください。