Attitude signal
略号「ATT」。
通称「カモン・ノンカモン・シグナル」です。
「アチチュード」とか「アティチュード」とか「アティテュード」と表記しますが、
ここでは「アティテュード」にします。
なぜに「come-on」などと言うかといいますと。
1920年代のブリッジ草創期に米国でカルバートソン(Culbertson)が
ブリッジを流行らせようとして。
ブリッジ用語に難しい言葉を使うと流行りませんから。
耳障りの良い、威勢の良い言葉を多用しました。
例えばプリエンプティブ・ビッドを「シャットアウト・ビッド」と呼びました。
Shut outは対戦相手(敵)に対して邪魔をするビッドで、味方に対して
は使わないわけです。
当時の「ミスターブリッジ」エリー・カルバートソンについては
記事
ブリッジの和製英語 の最後の方と、
記事
5NT グランドスラム・フォース にも少し書きました。
カモン・シグナルは正式には「エンカレッジ・シグナル(略号ENCRG)」、
ノンカモン・シグナルは正式には「ディスカレッジ・シグナル(略号DISCG)」
といいます。
(イ)パートナーのリードに対して
または、
(ロ)ディスカードのとき
に出します。
ディクレアラー側のリードに対しては出さないわけで。
敵に「カモン」したら変ですし。
「スタンダード・アティテュードシグナル」の強弱については、
よりディスカレッジ ← → よりエンカレッジ
2 3 4 5 6 7 8 9 10
「低いカード」がノンカモン、「高いカード」がカモンになります。
清水教室「ディフェンスコース」から
オークションはEastの1
オープン、Southの1
オーバーコール、
Westのネガティブダブルと展開。
と
で競り合って、コントラクトはSouthの3
。
Westはトップ
をリード。
Eastは
のノンカモン(ディスカレッジ)シグナルを出します。
Westから見て、
シフトは明らか。
ディフェンス側は開幕5連勝でコントラクトをワンダウンさせます。
ここでのEastのノンカモンが「フォルス・アティテュード(false attitude)」。
スーツだけなら「カモン」を出すべきですが。
わざと「ノンカモン」を出して、他のスーツへのシフトを促しています。
ディフェンスの常道は、
(1)目標トリック数を設定して、
(2)パートナーの強さを想定して、
(3)ディフェンスの方針を立ててから、
(4)シグナルを出す。
この順番です。
2001年9月 セクショナル・スイスチーム戦 最終ボード
ディーラーWest 双方バル
Southの1NTオープンののち、両テーブルとも3NTになりました。
ビッドについては置いておいて。
一方のテーブルでは。
ディクレアラーはスモール
のリードを10で勝ち、
でダミーに渡って、
をフィネス。Westがキングで勝って、ここで
にシフト。
スリーダウン(EW+300)。
もう片方のテーブルでは。
同じスモール
のリード。
ディクレアラーは
10で勝ち、やけ気味に
AKを取りました。
ここでEastが?
9でカモンシグナルを出した。
以降は同じプレー経過になって。
結果はツーダウン(EW+200)。
この差の100点、3 IMPで優勝が逃げました。
マーシャル・マイルズ(Miles)著 “Defensive Signals” 144頁
…common sense requires that you refuse to discard potential
winners, whatever conventions you are using, and that you
guard honors that need to be guarded.…
意訳しますと、
「パートナー間でどのようなシグナルの約束をしていても、潜在的な
ウィナーを捨ててまでシグナルを出さない。守らなければならない
アナーカードもまた、あくまで守らなければならない。これが常識」
ということです。
「シグナルを出しました、よくわかりました、損しました」では本末転倒
なわけで。
次もそのような例です。
2014年3月 リジョナル・チーム戦
ディーラーSouth EWバル
Southが14点で15〜17の1NTオープン。
Northはステイマンを経由して2NTとインビテーション。
Southはノンフォーシングの3
をビッド。
Northは
Kがあるので3NTに「乗り」ました。
オープニングリードは
2。
3→Q→Aと進みます。
ディクレアラーは手元からスモール
でダミーのキングが勝ち。
続けてダミーから
が引かれます。
ここでEastは?
を捨てます。
Westは
Aを取ってから?
「
2」にシフト。
Westには
の絵札など無いことを、Eastは知っているはずです。
2003年1月 リジョナル ミックスド・ペア戦
ディーラーEast 双方バル
Southの1NTオープンが流れて、コントラクトに。
Westは
2をリード。
ディクレアラーはジャックを引き、右手のクイーンをキングで勝ち。
でダミーに渡り、ダミーの側から
を引きました。
右手の「
9」をエースで勝ち、「
4」を「87」に向けて負けに行きます。
かなりずうずうしいプレー。
Westは「
10」で勝ち、ここで?
というか、Eastは
の3巡目に何をディスカードしますか?
を捨てて、パートナー(West)が
を出して来ることを防ぐ、
と同時に、
に興味があることを示唆します。
結果はダウン4、EW+400。