普通のスーツプリファランス・シグナルでは対応できない状況について。
例えば

コントラクトで、シングルトン

がリードされたとき。
[ダミー]

xxx

x

AJ10xxx

KQx
[ディクレアラー]
Eastは

リードをエースで勝ち、

を返します。
スーツプリファランスで

を示唆したいときには

Jを、

を示唆したいときには

スモールを出します。
ところが以下の配置では?
[ダミー]

xxx

x

AQJxxx

K10x
[ディクレアラー]
Eastは

リードをエースで勝ち、

を示唆したいときには

Qを出します。
ところが

を示唆したいときにスモールを出すと、「10」でフィネスされて
しまいます。
そこで「

J」を出すのですが、これは最初の配置のときの「

J」と同じに
なってしまいます。パートナーには「

ではなく

示唆」と見えるでしょう。
この問題を解決するのがキット・ウールジー(Kit Woolsey)の提案です。
パートナーのエド・マンフィールド(Ed Manfield)との共同開発のようです。
(イ)パートナーがシングルトン(と思しき)リードをして、
(ロ)ダミーが「xxx」の3枚のとき。
サードハンドの出し方:
(1)「AQJxx(x)」
「クイーン」はスーツプリファランス = Hi。
「ジャック」はスーツプリファランス = Lo。
これは普通です。
(2)「AJ109x(x)」
ジャックをHiにすると、(1)と矛盾します。
従って。
「ジャック」はスーツプリファランス = Lo
のまま。
「10」がスーツプリファランス = Hi
になります。
(3)「AQ109x(x)」
(2)からの続きです。
「10」はスーツプリファランス = Hi。
従って、
「9」がスーツプリファランス = Lo。
(4)「AJ98x(x)」
「9」はスーツプリファランス = Lo。
従って、
「8」がスーツプリファランス = Hi。
まとめますと、「Q、10、8」 = Hi
「J、9」 = Lo
になります。

Eastの1

オープンののち、Southの4

。(3NTが良いのですが。)
シングルトン

5のリード。
Eastはエースで勝ち、リターンは「

J」も「

10」も、パートナーには
「スーツプリファランス = Hi」で

示唆に受け取られる可能性があります。
先の取り決めですと、
「J」 = Lo =

、
「10」 = Hi =

と間違いがありません。(取り決めを忘れていなければ、ですが。)
この記事を書いていて思い出したディールがあります。
米国「ブリッジワールド」誌2015年11月号のプレー問題

Westの1

オープン、Northの1

オーバーコール、
Eastのプリエンプティブ3

レイズののち、
Southの4

という中途半端なコントラクトになります。
Westは「

Q」という、これだけ2ダウンのリード。
Eastがエースで勝ち、

を返します。
「J109」どの

を?
ひとまず置いておいて。
ディクレアラーは

K、Westはラフ。
ここでWestは?

Kが安全そうに見える。これが間違い。
ディクレアラーは

A、

ラフ。

8でフィネスしながらダミーに渡り、再び

ラフ。続けて

Kで狩り上げながらダミーに入り、4枚目の

を引いて、
手元から

をルーザーオンルーザー。Westにスローイン(throw-in)。
あわれWestには

しか残っていないので、ダミーの

Qがエントリーと
なって、

の13枚目を取られてしまいます。
第3トリックに戻って。Westが

Kをラフしたのち。
点数的にパートナーには

Aが無いことはわかっているのですが。
Westから

J1096のいずれかのリードは、

スーツでは損しても、
ワンダウン。

を出すとツーダウン。安全そうな

だけ4メイク。
「シグナルに頼るとこうなる」という見本です。