切り札を使ってスーツプリファランス・シグナルを出そうと。
普通はサイドスーツでスーツプリファランスを出すのですが、
「いま切り札でシグナルを出すしかないとき」に使います。
私が最初に見かけたのは1998年の世界選手権ミックスド・ペア戦。
ディーラーSouth、EWバル

Southの1

オープンから始まり、Northがレイズして4

になります。
オープニングリードはスモール

。ダミースモール→

3→

10と進み、
Westの側からはパートナーの「

3シングルトン」が明らかです。
ディクレアラーは

を出して、Eastは直ぐにエースで取る。
ここで?
実際は

が正解なのですが、ダミーの眺めからは

を出すのは抵抗
があります。
というか。
Westが「

10」で

Aを表したのですが。
伝わったでしょうか?

AでWestに入れ、

をラフすればジャストメイク。
実際はEastが

を出して5メイク。
Westの白人男性は「

10を出したんだけどな〜」と苦笑いしていました。
このディールは、ほぼ全テーブルでコントラクトが4

になりそうです。
ペア戦ですから4メイクと5メイクの差は大きい。
最初に戻って。仮にスモール

をリードすれば、ダミーの

Jでフィネス
したとして、Eastが

Qを出して勝ったとして。ここでシングルトン

に
シフト。この経過は1ダウンになりますが、さすがにそこまでやる人は
いないものと思われます。
2002年 世界選手権オープンペア戦
ディーラーWest、ノンバル


W | N | E | S | |
P | P | 1NT | DBL* | 2 * | P | 2 | 2 | P | P | 3 | 3 | All | Pass | |
|
ダブル = ワンスーターの
オーバーコール
2

= トランスファー(

)
3

に対してWestはスモール

をリード。
Eastはエースで勝ち、「

6」を返します。
ディクレアラーは

Kを勝ち、手元から

Jをリード。
「足止め」です。
Westは1回は足止めをくらい、2回目を

Aで勝ちます。
ここで?
ダミーの眺めからは

を出しそう。
その前に。
Eastはどの

をフォローしましたか?

Hi-Loで、

スーツを示唆します。
いや、この際、

示唆でも構わない。
Westが

にシフトするか

を続ければ、ジャストメイク。
Westが

にシフトすると、

がノールーザーになって、4メイクです。
ディーラーNorth、EWバル

Northは1

オープンして、Southの1

レスポンスを2

にレイズします。
オープナーは弱いダブルトン(ここでは

)があるときには、強い3枚メジャー
でレイズするのが米国流。
レスポンダーは「2

」とヘルプスーツ・ゲームトライを展開。
オープナーは「3

」と良い5枚(トリックの素 = source of tricks)を表し、
レスポンダーが

Kを当てに4

をビッドします。
Westは「

9」をリード。
ディクレアラーはダミーで勝ち、スモール

を引いてキングの勝ち。
続けて手元から

を出して、

Aが勝ちます。
ここでEastは?

、

または

シフトは4〜5メイク。

を攻め続け、

Aと合わせて3トリックを確保。
さらに

をダミーでラフさせることで、

スーツを使えなくさせてワンダウン。
ところが仮にディクレアラーが、

AQx

Q10xxx

Kx

Jxx
のときには

は失敗。

を攻めれば3連勝です。
では

か

かが何故わかる?
オープニングリードにWestが「

9」を出した。
これが

の強さを示唆するスーツプリファランス・リードになっています。
仮に

スーツの強さを示唆したいときには「

4」をリードします。
では

にも

にも何も無いときには?
これも「4」を出します。但しそのときにはEastは点数がたくさんある
はずなので、Westには点が無いことが最初からわかっているはずです。
ディールは米国「ブリッジワールド」誌1997年3月号の
“Kantar for the defense”から引用しました。
エドウィン・カンターの解説には「ディクレアラーが切り札を回収していて、
ディフェンス側のラフが差し迫っていないとき。切り札の枚数を教える
シグナルではなく、切り札でスーツプリファランス・シグナルを出すことは
上級者の間では当然のように受け入れられている」とあります。
米国ブリッジ連盟(ACBL)発行「ブリッジ百科事典(Encyclopedia)」
には以下のディールが。

Southの4

。
Westはダブルトン

をリード。
Eastは

Jを出して、エースの勝ち。
ディクレアラーはトランプを狩り集めます。
このときWestは「

5→4→3→2」とフォロー。
続けてディクレアラーは

をキングに負けに行きます。
Eastは

Kを取って、スモール

にシフト。
ディフェンスは

を出し続け、ディクレアラーは

が手出しになります。
Westの

の出し方は、

の枚数を教えるものでは無いということで。

の枚数を教えても仕方ないし。

スーツを示唆するトランプ・スーツプリファランス・シグナルです。