「ピッグペン・クー(pigpen coup)」
pigpen = 豚小屋、とはまたひどい名前で。
実は「バース・クー(Bath coup)」の親戚です。
風呂の反対で豚小屋と。豚はきれい好きと聞いたことがありますけど。
バースも、もともとは地名で。英国のBath市。
古代ローマ帝国の温泉保養遺跡など街全体が世界遺産になっています。
なぜ「バース」なのかと言うと、これまた長い話になりまして。
コントラクトブリッジがまだ「オークションブリッジ」というゲームだった
1908〜1930年頃。「オークションブリッジ」の規則を始めて定めたの
が英国の「バース(Bath)・クラブ」と「ポートランド(Portland)・クラブ」。
米国ではその1ヶ月後の1908年10月1日に、ニューヨークの「ホイスト
(Whist)・クラブ」が規則を定めたようです。
この「オークションブリッジ」なるもの、どのようなゲームかと言いますと。
ビッドあり、ダミーあり。
ディーラーはパスしてはいけない、必ず何かをビッドすること。
3
6メイクでもスラムの得点がもらえる、等々。
ブリッジの歴史書「バンブルパッピー・デイズ(Bumblepuppy Days)」
から引用します。
「オークションブリッジ」のトリック点は、
が2点、
が4点、
が6点、
が8点、NTは12点。
3
(3×8)は5
(5×4)より高い。
だから5
のビッドに対して、3
をオーバーコールできる。
2NT(2×12)は7
(7×2)より高い。
だから7
のビッドに、2NTのオーバーコールは認められる。
3
(3×8)と6
(6×4)は等しいが、6
の方がレベルが高い。
従って、3
に6
のオーバーコールは有効で、逆は規則違反。
「バリュー・コーリング(value calling)」とか「バリュー・ビディング」と
言われる方式です。
これに対してコントラクトブリッジは、「マジョリティー・コーリング(majority
calling)」とか「マジョリティー・ビディング」と言われる方式です。
右手の3
ビッドに2NTをオーバーコールした。
3
のトリック点は3×20=60点で、2NTは40+30=70点。
競り(オークション)をしているのに、何で「70点の2NT」が「60点の3
」に
競り負けるのか?
こういうことを言う人に対して「規則違反だから」と答えるのは野暮。
「『マジョリティー・ビディング方式』だから」と。
コントラクトブリッジの発案も1925年説とか1927年説とかあるようです。
有名な「バンダービルト・クルーズ」。
鉄道財閥王ハロルド・バンダービルトが1925年の10月、カルフォルニア
からキューバに向けて渡航。パナマ運河の船上でコントラクトブリッジを
発案したと。
私はパナマ出身のブリッジプレーヤーには「パナマ沖」と聞きました。
豪華クルーザーに使用人とともに乗りこんでいたのでしょう。
カードゲームはひとりでは出来ませんから、友人達も一緒に。
考案したのはバンダービルト自身ではなく、周りの誰かかも知れず。
乗り合わせた女性のひとりが「バルネラブル(vulnerable)」という言葉
を最初に使ったらしく。
「コントラクトブリッジ」の名称もバンダービルト・クルーズの何年か前に
発行されたいくつもの書物に残っているようです。
「バース・クー(Bath coup)」
コントラクト:3NT オープニングリード:
K
ディクレアラーは手元からスモール
をプレーして、オープニングリードの
Kに勝たせます。あとは何が来ても
キングに負けに行って9トリック。
Westが
を出し続けると4メイク。のちのちにディクレアラーがWestへの
スローイン(throw-in)を試みると4メイク。有効なディフェンスはありません。
コントラクト:3NT オープニングリード:
K
ディクレアラーはスモール
をプレーして
Kに勝たせます。Westは
構わず
を出し続け、
のダブルストッパーを攻撃。
3トリックと
2トリックで3NTをダウンさせます。Westは絵札で12点あるので、
パートナーを当てにしないで自分ひとりでディフェンスします。
パートナーの点数を数えることが大事という一例です。
「ピッグペン・クー(pigpen coup)」
コントラクト:3NT オープニングリード:
K
ディクレアラーは
シフトが怖い。
さりとて
Aを取ってしまうとあとが無い。
そこで、「
J」をプレー。
Westは
を続けてくれるでしょうか?
2巡目の
を勝ち、
のフィネスを右手に流し込んで3メイク。
一般的に「
AJダブルトン」はエースを取るのが手筋なのですが。
ディフェンスとしては、仮にディクレアラーが「
AJダブルトン」で
「ジャック」を出しているときには、Eastが「
543」からシグナルを
出しているはずです。それを見て、Westが気付く可能性はあります。
それでも
シフトするか、
にシフトするかは微妙です。
「ピッグペン・クー」に関してはJCBLでもおなじみのブライアン・シニアが
南米ブリッジ連合(CSB:Confederacion Sudamericana de Bridge)
のウェブサイトで記事にしています。
リンク →
csbnews23May2015 米国「ブリッジワールド」誌2016年1月号24頁にも、「ブリッジジャーナル
(The Bridge Journal)」誌(1968年廃刊)からの引用記事が載っています。