国内のことに気を揉んでいる間に、世界には激震が走っていました。
8月24日、米国ウェブサイト「ブリッジ・ウィナーズ」が以下の記事を発表。
2014年のスピンゴールド杯とライジンガー杯を優勝したチームのうち
4人のメンバー(ボイエ・ブログランド、アラン・グレーブス、エスペン・
リンドクヴィスト、リッチー・シュワルツ)が、2014年から15年にかけて
ロータン・フィッシャー、ロン・シュワルツとともに獲得したタイトルの返上
を申し出。ブログランドは今朝の「ブリッジ・ウィナーズ」に声明文を発表。
「もしチームに不正行為を働いたペアがいたとしたら、共に獲得した
マスターポイント、シードポイント、タイトルは返上するべきではない
でしょうか。シュワルツ・チーム(リッチー・シュワルツ、アラン・グレー
ブス、エスペン・リンドクヴィスト、ボイエ・ブログランド)は過去2期の
2014年と15年に獲得したスピンゴールド杯、ライジンガー杯とジャ
コビースイス杯を返上することに決めました。
我々はブリッジはクリーンなゲームであるべきと信じており、ブリッジ
のゲームを愛してやまないです。」
ブリッジ・ウィナーズ →
「2014年スピンゴールド杯勝者が辞退を申し出」 日本国内では9月始めに連盟競技委員会が開催されました。懸案事項
が討議されるわけです。競技委員会が調査結果及び委員会見解100
ページでも提出したなら、拍手喝采だろうに。残念なことです。
また、競技事業部担当理事が意見交換の為に同席されるそうで。
この米国の事件のことを、とうとうと話して行かれたと。
残念ながら声明文にも「身を律する」という言い回しは見当たらないです。
米国の話に戻って。
チームメイトのアラン・グレーブスとリッチー・シュワルツは「ブリッジ・ウィ
ナーズ」の取材に対して、声明を支持していることを明らかにしました。
グレーブスは「心の底から(wholeheartedly)支持している」と語りました。
我々が見習って良いのは、このモラルの高さでしょう。
8月29日、告発ウェブサイト
Bridge Cheaters 立ちあげ。
チームメイトだったとき、「噂」を聞いた。
対戦相手となったとき、怪しいと思った。
改めてBBOの記録を見ると、パンドラの箱を開けたようだった、
とブログランドは書いています。
8月30日、ACBL会長が「ブリッジ・ウィナーズ」に於いて意見表明。
リンク →
ACBL会長声明 8月31日、ノルウェーブリッジ連盟はヨーロッパブリッジ連合に対して
正式調査を要求。
リンク →
ノルウェーブリッジ連盟ウェブサイト関連記事(ノルウェー語) リンク →
ノルウェーブリッジ連盟提出文書(英語) 8月31日、イスラエルブリッジ連盟は特別倫理審査委員会(Special Ethics
Committee)を発足。
リンク →
イスラエルブリッジ連盟公式サイト(ヘブライ語) リンク →
特別倫理審査委員会文書(英語) 9月30日までに国内外からの情報提供を呼びかけ。
これに対する被疑者ペア「ロータン・フィッシャー、ロン・シュワルツ」側
の回答期限を10月30日に設定。
回答があってから30日以内に
(一般公開の)「公聴会」を開き、
ブリッジ連盟としての結論を下します。
関連リンク→
ブリッジ・ウィナーズ「イスラエルブリッジ連盟発表」 9月1日、被疑者ペア「ロータン・フィッシャー、ロン・シュワルツ」は弁護士
を通じて100万米ドルの損害賠償を請求。
リンク →
弁護士からの通知書 9月2日、オーストラリアのイシュマエル・デルモンテ(Ishmael Del'Monte、
通称「ケチャップ」、日本のプレーヤー達とも親しい人です)が暗号
コードを解読したと「ブリッジ・ウイナーズ」に投稿。
リンク →
コード解読 方々の情報を総合すると、ペアの不正な意思疎通の手段は、自分の服を
引っ張る、咳をする、ペットボトルを動かす、椅子を動かす、テーブル上の
肘の位置、口に手を当てる、耳を掻く、ビッディングトレーを引き上げる側、
ビディングトレーを引き上げる速さ、ビディングトレーからボードを置く位置、
あの手この手。
9月4日、米国のキット・ウールジー(Kit Woolsey)が試合記録により暗号
コードを裏付け。
リンク →
ハンガリーとイスラエルの対戦 9月5日、イスラエルブリッジ連盟は世界選手権バミューダボウルの
参加辞退を表明。
リンク →
イスラエルブリッジ連盟発表 不正疑惑が挙がったとき。
ブリッジ界はこのような対応を見せます。
参考(1) 全米選手権について
全米選手権試合はフライトABCなどの無い、単一フライトです。
昨今は世界各国からトップペアが参戦するので、世界選手権
バミューダボゥルよりもレベルが高いと言われています。
スピンゴールド杯は、日本では文部科学大臣杯の競技方式。
同じ対戦相手チームと1日64ボード、7日間のトーナメント方式
の試合です。
ライジンガー杯は、日本では藤山杯と同じボード・ア・マッチの
採点方式。予選、準決勝、決勝の3日間。極めてレベルが高い
ので、参加チームが少ないです。
参考(2) シードポイントについて
全米チーム選手権試合のシードポイントは、マスターポイントと
前年度の全米(ノックアウト方式)チーム選手権の結果から計算
されます。米国外からの参加者についてはWBFマスターポイント
などを参考に計算されます。いずれも担当委員会が最終的な
決定をします。詳しくはリンク →
ACBL試合補足要項 米国内に於けるシードポイント制度に関する議論については、以下を。
リンク →
ブリッジ・ウィナーズ「シードポイント制度の悪循環」 なお米国ブリッジ連盟に於いては、一般競技会は「シードポイント」
ではなく「マスターポイント」でフライト分けされます。
JCBLもシードポイントの計算方式を変えるなら、マスターポイント
方式に切り替えすればよかったのではと思います。
参考(3) シュワルツ・チームについて
リッチー・シュワルツ(Richard Schwartz)は72歳、スポンサー。
アラン・グレーブス(Allan Graves)は66歳、カナダのプレーヤー。
ボイエ・ブログランド(Boye Brogeland)は42歳、エスペン・リンド
クヴィスト(Espen Lindqvist)は31歳、ともにノルウェーのプレーヤー。
ノルウェーは2007年の世界選手権を制したブリッジ強国です。
なお Brogeland は、ノルウェーでは「ブロゲラン」と発音するようです。
参考(4) 糾弾されているペアについて
ロータン・フィッシャー(Lotan Fisher)とロン・シュワルツ(Ron Haim
Schwartz)はイスラエルの若手ペア。2010年のジュニアチーム
選手権チャンピオン。このペアに関する最近の動向ついては、
リンク →
ウェブサイト「ニュー・イン・ブリッジ」の記事 全米や世界選手権は準々決勝くらいから全てビデオ撮影されます。
ブログランドは、まだ手始めで証拠を順次に挙げていくと明言して
いますから。不正行為の証拠を嫌というほど突きつけられて、
この若者達はボロボロにされて行くのでしょう。
周りの友人達は「ブリッジをやめろ」と言ってあげるべきだと思います。
しかしながら不正行為を認めると、
方々から巨額の損害賠償を請求されますから。
せめて嫌疑不十分で「引き分け」に持ち込むのに必死なのでしょう。
哀れと思います。