君子の心得を
「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」
と古楽府ではうたっている。
政治家の心得について
「『疑われたら負け』これがルールだ」
と書いたのは内田樹だったか。
ブリッジでは、疑われるにはたった1つの状況証拠で足りていて。
古くは1965年のブエノスアイレス事件(Buenos Aires affair)、
1975年のバミューダ事件(Bermuda incident)、
1977年のヒューストン事件(Houston affair)。
いま疑われているのは、イタリアのファントーニ(Fulvio Fantoni)と
ヌーン(Claudio Nunes)のペア。
ふたりは世界ブリッジ連合(WBF)マスターポイントランキングの1位と2位。
問題のディールは以下の通り。
2015年5月 イタリアオープンチーム選手権(プレミア・リーグ)決勝
ディーラーSouth、EWバル
2
=
スーツ
O.L.
A→3→6→8
2.
2→
4→
6ラフ→
Q
3.
Q→
K→
A→
3
4.
7→
6→
J→
8
ディフェンス側の開幕4連勝。Southの
Aのオープニングリードは、
6
のビッドが
ボイドの可能性があるので、妥当。しかしながらダミー
が見えたあとでは、パートナーに8枚
を想定する論理的根拠が無い。
従って
Aを取らずにスモール
を続けたのは変だと。ペア間で不当な
情報(UI = Unauthorized Information)をやりとりした可能性がある。
問題はイタリアのスポーツ仲裁裁判所(CAS)に持ち込まれました。
国際オリンピック委員会(IOC)からの独立機関である、スポーツ仲裁
国際理事会(ICAS)の運営する機関です。日本では日本スポーツ仲裁
機構(JSAA)にあたります。
裁判の概要は以下の通り。
検察: ファントーニとヌーンによる異常な(abnormal)プレーは、不当な
情報に基づくとの疑いがある。イタリアオリンピック委員会憲章
第48条a)ならびに競技運営規則第36条に違反として提訴する。
被告: ヌーンは、意識喪失(mental blackout)の状態で正しく考える
ことが出来なかった。ディクレアラーが
ボイドであると信じていた
ので、考えずに機械的に
を続けた。
判決: ペア間で不当な情報のやり取りがあったことを裏付ける証拠は
無い。従ってイタリアブリッジ連盟の会員であるファントーニと
ヌーンを無罪放免とする。
なお記録担当のビューグラフオペレーターの証言では、ヌーンはオープ
ニングリードを選ぶのに10秒ほどかけ、2秒後には
を続けたそうです。
この1件だけで、いきなりスポーツ仲裁裁判所に持ち込まれるはずがなく。
過去にも色々と黒い噂があったのではないかと。また、過去の試合に
於いてブラックアウトすることがあったとは証言されていないようです。
BBOでのディール記録についてはリンク →
ビューグラフ19番ボード ネオナポリタンクラブのウェブサイトの記事についてはリンク
→
Claudio Nunes’ Black-out →
Nunes’ Black-out(2):Verdict