ミックスド・レイズ(Mixed raise)。
この言葉は割と新しいのですが、ビッドそのものは30年以上も前から
使われています。
例えば。
4枚サポート、6〜9点。
シングルレイズ(2
)にはハンドが強い、
キュービッド(2
)するには弱い、
プリエンプティブレイズ(3
)するには強い。
中途半端な強さのハンドを表します。
ブリッジ辞書
(The Bridge World Official Bridge Dictionary)による
定義は「mixed = プリエンプティブとコンストラクティブの両方の要素を
兼ね備えた(レイズ)」です。
米国ブリッジ連盟発行ブリッジ百科事典(Encyclopedia)の解説では。
「7〜9点、4枚以上のサポートとシングルトン。良いプリエンプティブレイズ」
とか、
「6〜9点、5枚サポート、または4枚サポートとシングルトン」
とか、
「6〜9点、4枚以上のサポート、ハンドの形は最低でも絵札の集中した
4432。プリエンプティブレイズの形、シンプルレイズの強さ」
とか。項目の執筆者によって様々です。
要するにプリエンプティブレイズよりも強く、リミットレイズよりも弱い。
「シェイプ(shape)・リミットレイズ」
と言う人も、
「ディストリビューショナル・リミットレイズ」
と説明する人も、
「セミ(semi)・プリエンプティブレイズ」
と呼ぶ人もいます。
1の代のオーバーコールに対するジャンプキュービッドのレスポンス。
(1
) 1
(P) 3
(1
) 1
(P) 3
(1
) 1
(P) 3
(1
) 1
(P) 3
(1
) 1
(P) 3
(1
) 1
(P) 3
以上の6通りです。
パスト(Passed)ハンドでのレスポンスにドゥルーリーフィット(Drury-fit)
を使っていますか?
すなわち以下のようなオークション経過。
W | N | E | S | |
P | P | 1 | P | 2 | | |
|
W | N | E | S | |
P | P | P | 1 | P | 2 | |
|
サードハンドとフォース(fourth)ハンドの1の代のメジャーオープンに
対して、「2
」のレスポンスは3枚以上のサポートとゲームインビテー
ションの強さを表します。
パートナー間でこのコンベンションを使う約束があるとき、以下のビッド
はどのようなハンドを表すか?
W | N | E | S | |
P | P | P | 1 | P | 3 | |
|
「パス!→パス→パス!→1
→パス!」と進んでいるわけですから、
ずっとパスしている対戦相手をプリエンプトで邪魔するのは何か変。
ゲームインビテーションをするなら2
を使うのが有利。
じゃあ3
は何かというと、これも「ミックスド・レイズ」です。
2005年 PABF2005(於韓国) 第8ラウンド 7番ボード
ディーラーSouth 双方バル
NS側のハンドは以下の通り。
N:
9
J842
AK10952
A3
S:
KJ7
Q10963
Q63
76
EW側は4
がメイクしてEW+620。これに対してNS側が
5
xでサクリファイスすると2ダウン(EW+500)、5
xで
サクリファイスすると3ダウン(EW+800)です。
2014年 横浜インビテーショナル 第8ラウンド 28番ボード
ディーラーWest NSバル
W | N | E | S | |
P | P | 1 | P | 3 | P | P | P | | | |
|
NS側のハンドは以下の通り。
N:
62
A4
AJ86
Q9753
S:
987
Q5
Q95
AJ842
Eastの
コントラクトは、
の配置を当てれば3メイク。ディフェンスは
を攻め続ければ、のちのち
Qのプロモートに成功して5トリックを
取れます。
以下のようにビッドが進んだときには。
W | N | E | S | |
P | P | 1 | P | 2 | 2NT | |
|
自分達だけバルのセカンドハンドでNorthをオープンする人は多くは
ないと思われます。しかしながら次回にアンユージュアル2NTで入る
のは難しくないでしょう。NS側の
コントラクトは
をフィネスして、
10の位置を当てれば5メイクします。
2012年 渡辺杯 第1ラウンド 14番ボード
ディーラーEast ノンバル
「1
→1
→DBL」と進んで、
Westはビッドに困ります。
ミックスド・レイズがちょうど良い
くらいと思われます。
NS側のハンドは以下の通り。
N:
−−−
A96
A10872
KQJ105
S:
KJ10
QJ1082
J65
84
結果的にはNS側が4
をビッドすると4メイクして、NS+420は73%
スコア。これに対してEW側が4
でサクリファイスするとダブル付きの
2ダウン。NS+300は約60%スコアでした。
2011年 米国代表選抜試合決勝 第6/8セグメント 87番ボード
ディーラーSouth 双方バル
ハンプソン(Geoff Hampson)とグレコ(Eric Greco)のペアは、Westの
パス、Eastのストロング
オープンから始まって、6巡のビッドで6
に到達。
反対テーブルのマーテル(Chip Martel)とスタンズビー(Lew Stansby)
のビッドは以下の通り。
2
= ドゥルーリーフィット
3
=
スーツ、スラムトライ
4
= コントロールキュービッド
スラムルーズで13IMPを失いました。
このハンドは以下のようにビッドすれば6
に到達できると思われます。
3
= ミックスド・レイズ
4
= コントロールキュービッド
4
= コントロールキュービッド、
のコントロールを否定
5
=
のコントロールを保証、
切り札の内容でのスラムインビテーション
最後に、米国ブリッジ連盟会報2009年4月号から。
ボード・ア・マッチ(B-a-M)チーム戦 ノンバル
W | N | E | S | |
1 | 1 | DBL | ? | | | |
|
何を言いますか?
パネル回答者18名の選択は:
3
(プリエンプティブ・レイズ) 13名
3
(ミックスド・レイズ) 3名
2
(シングルレイズ) 2名
でした。「
K」が1
オープナーの手前に位置しているので、
うしろのエースに捕まっている可能性が高いです。
その分を差し引いて評価すればプリエンプティブ・レイズ、
あまり差し引かないで評価すればミックスド・レイズになるということです。