この記事は
ふたたびLTCについて の続きです。
ヨハネス・クールマン(Johannes Koelman)が「ブリッジワールド」誌
2003年5月号で発表した“NLTC(New Losing-Trick Count)”に
ついて説明します。
そもそもLTCには補正(アジャスト)が必要でして。
伝統的なLTCだと、いずれのハンドも『8ルーザー』になります。
そんな馬鹿な、と誰もが思うでしよう。
NLTCだと左から、『6』、『8』、『10ルーザー』になります。
このようにルーザーの数え方を改め、さらに「25」から引き算します。
詳細は WiKi Project Contract Bridge
Losing-Trick Count でも
紹介されています。
次のハンドも。
LTCだと、24−(4+8)=12。すなわち12トリック。
NLTCだと、25−(6+6)=13。グランドスラムになります。
また、LTCやNLTCの欠点については以下のハンドで。
だと4
が固いですが、
では3
がダウンすることもあります。
ルーザーカウントについては LTC、NLTCとも同じ数字になります。
ハンド全体の強さとともに絵札の配置が重要なので、
「1
−2
: 3
」とヘルプスーツ(ゲームトライ)を使うか、
何らかのアスキングビッドの類いを使う必要があるということです。
オーストラリアのロン・クリンガー(Ron Klinger)はプレーヤーとして、
また幾多のブリッジの本の著者として名高い人です。
いま73歳。ブリッジ界には珍しい、とは言い過ぎでしょうか。紳士です。
LTCについて1986年に“The Modern Losing Trick Count”という
本を著しています。表紙にはこのハンドが。
「この25HCPでグランドスラムをビッド出来ますか?」
30年前なら一苦労でしょう。現代なら1
オープンをスプリンターレイズ
して、RKCBを経由してほどなく7
に到達するでしょう。
LTCについてはこの十数年で何冊かの本が出ています。
いずれも、どのように補正するかが課題で。
昔からのLTCでは駄目だ、ということでは一致しているようです。
以上の他にLTC について述べ立てる文書は、この数十年ほとんど
見なかったのですが。
この数年、急に二つを目にしました。以下に紹介します。
「ブリッジ・ワールド」誌 2013年4月号 誌上ビッド対戦
East: Yaniv Zack
West: Michael Barel
バーレルとザックはイスラエルのペア。
近年のイスラエルはヨーロッパ選手権や世界選手権で活躍しています。
エリック・コキッシュと ビバリー・クラフトの解説には、
「Eastの
はクィーンダブルトンという、役立つかどうか怪しい持ち方で
ある。このハンドの『8ルーザー』を埋め合わせする材料は見当たらない
にもかかわらずオープンした」というようなことが書いてあります。
(Did anyone notice that East’s pretending that his doubleton
queen was full-valued led him to open an eight-loser hand
with no redeeming features?)
「ブリッジ・ワールド」誌 2014年6月号 誌上ビッド対戦
East: Richie Schwartz
West: Lew Finkel
2NT = ストロングレイズ
3
= ミニマムで良いハンド
3
= リレー
3
= ショートスーツ無し
3
= ストール(STALL)
3NT = フリボラス(FRIVOLOUS)
エリック・コキッシュと ビバリー・クラフトの解説には、
「3
はウェイティングビッドでEastの意見を聞いた。これに対してEast
はマイルド・スラムトライと答えた。Westのハンドは『6ルーザー』なので
積極的にはならない」というようなことが書いてあります。
(Three spades was a stall,leaving room for East to express
a further opinion.That opinion was delivered in the form of
a mild slam-try,not enough for West(with six losers)to get
excited.)
最近のエリックはLTCに嵌まっているのかもしれません。
そういえば「トータルトリックの法則(LOTT: Law of Total Trick)」も。
ラリー・コーエン(Larry Cohen)が“To Bid or Not to Bid”を著した
のが1992年、“Following the LAW”が出版されたのが1994年。
それから十年ほどはブリッジ雑誌を開くと必ず何人かがこの法則に言及
していたものです。
それが最近では、目にするのは年に1回あるかどうか。
ビッドの流行は一時的には勢いがあるものの、後年に残ることは難しい
ようです。