IMPチーム戦、バルです。
3
= スプリンター
(イ)何をビッドしますか?
(ロ)いつも組んでいるあなたのパートナーは何をビッドするでしょうか?
何をビッドするか決まりましたか?
米国ブリッジ連盟(ACBL)会報、2008年5月号の問題です。
パネル回答者(計18名)の意見は、
4
9名、
4
8名、
4NT 1名
でした。4
のビッドでコントロールキュービッドをする人と、
4
のビッドでスラムに興味を示さない人の数がほぼ同数。
どちらでもいいんだ〜、ということではなくて。
仮に、キュービッドに積極的な人が「4
」を言ったなら。
パートナーは「だいぶ駄目だ」と考えます。
また、キュービッドに消極的な人が「4
」を言ったなら。
パートナーは「かなり良い」と判断します。
それがパートナーシップで。
対戦相手に聞かれたら、
「いつもはキュービッドをする人が4
を言ったから、かなり悪い」
のように説明します。
だから。
「今日は4
、明日は4
」ではパートナーが困ってしまう。
「いつでも消極的(4
)」か、
「いつでも積極的(4
)」か、
「いつでも過激(4NT)」か。どれかにして欲しい。
長年にわたって組んでいるペアが有利なのはまさにこういうところで。
目新しいコンベンションを取り入れるよりも、ビッドの細かいニュアンスが
摺り合わせできている方が重要です。
パートナーを毎年のように替える人は思うような成果が上がらない。
20年ほど前。
「俺のパートナーはビッドの再現性が無い。同じハンドで同じオークション
経過でも、いつも違うビッドをする」と怒っていた人がいて。
聞いた私は。
『再現性』か。ドクターは難しい事を言うな〜。
と思いましたが。
例のスタップ細胞の件以来、『再現性』という言葉を聞くことが増えました。
ブリッジのパートナーシップはコンベンションの嗜好が似通っている方が
うまく行きます。すなわち、ペアの片方がコンベンション大好きでも、
もう片方がコンベンション嫌いだとペアとしてうまく機能しません。
ハマン(Bob Hamman)とウルフ(Bobby Wolff)が長年のペアを解消
したのは、ハマンが複雑なコンベンションを導入しようとしたのに対して、
ウルフはよりナチュラルなシステムの方が好きだったからです。年齢も
六十に達した頃だから当然と言えば当然ですが。
ウルフに逃げられたハマンは当時、世界ブリッジ連合(WBF)マスター
ポイントランキング1位でした。新しいパートナーに米国ブリッジ連盟
(ACBL)マスターポイントランキング1位のソロウェイ(Paul Soloway)
を選びます。ところがほどなくソロウェイは心臓発作で亡くなってしまい。
ニッケル(Nick Nickell)も、長年のパートナーのフリーマン(Richard
Freeman)を亡くして、カッツ(Ralph Katz)と組むようになり。
ハマンはジア・マームッド(Zia Mahmood)と組むのですが。
結局はスポンサーのニッケルに馘首され。
代わりに入ったのがワインシュタイン(Steve)とレビン(Bobby)です。
このペアについては記事
2オーバー1 INSTANT GF にも書きました。
『ハマンのルール』
「ビッドの選択肢に3NTがあったら、それを選べ」というのが有名です。
Hamman’s Law と呼ばれることもあります。ボブ・ハマンの「ボブ」は
「ロバート」の略称で。戸籍名は「ロバート・ハマン」ですが、ブリッジ界
ではボブ・ハマンで通っているようです。
「ハマンのルール」は、ハマンと親しい人達の間では『ロバートのルール
(Robert’s Rules)』と呼ばれていて。全部で6つあります。
1. If a number of bids are available and one of them is three
notrump,that’s the bid.
いくつものビッドの選択肢があるとき、そのなかのひとつに3NTがあったら、
それを選べ。(この『ルール』は誤用されることが多いと方々のブリッジ記事
で指摘されています。)
2. Never play Robert for the perfect hand.He never has it.
ロバートが完璧なハンドを持っていると期待するな、持っていた試しが無い。
3. If everyone at the table seems to be bidding their head off,
trust them,not Robert.
テーブル上の誰もが過激にビッドしているときには、ロバートよりも対戦相手
を信用せよ。
4. When contemplating a slam,always substract a kimg from
what it sounds like Robert has before bidding the slam.
スラムビッドを考えるときには、ロバートがビッドした強さからキング1枚分を
差し引け。
5. Be practical.
いつでも実践的に。
6. Do the right thing.
結果的に正しいことをせよ。
私はこの6番目が好きでして。能書きはいいから、正しいことをして欲しい。
2015年4月 柳谷杯 第2セッション 3番ボード
ディーラーS、EWバル
4
= スプリンター
レスポンダーが「4
」を言うか「3
」を言うかは微妙と思われます。
いずれにしてもオープナーが 「
xxxx
Ax
Axx
Kxxx」
の11点でも6
が出来るので、何らかのスラムトライは必要です。
実際の「4
」に対してオープナーは
KQという役に経たない持ち方
なので、ここで4
のコントロールキュービッドは言い過ぎでしょう。
しかしながら。
先の問題で「いつでも過激(4NT)」が18人に1人(5.5%)いたように。
このハンドでも「いつでも過激に4
キュービッド」をする人がいても
驚くにはあたいしません。パートナーの傾向を知っておくことが重要かと。
米国「ブリッジワールド」誌 2015年3月号
誌上ビッド対戦(Challenge the champs)
W: Bocchi
E: Madala
2
= アスキング
2NT = 4枚
、ミニマム
4
=
ボイド
4
= ラスト・トレイン
4
=
RKCB
4NT = 1キーカード
レスポンダーが
ボイドを表しました。オープナーは
Kが無駄になって
いるにもかかわらず、強い切り札と
ダブルトン、
KQのダブルトンを
評価しました。「ラスト・トレイン(last train)」は、スラムに積極的だが
ゲームレベルを超える意思はないことを伝える、
スーツに関係の無い
コンベンショナルビッドです。
元イタリア代表で現スペイン在住のボッチ(Noberto Bocchi)、イタリア
では「ボッキ」と発音するそうです。アルゼンチン出身で祖父がイタリア人
のマダーラ(Agustin Madala)は現イタリア在住。
このペアは今年3月の米国バンダービルト杯を勝ったばかりです。
ボッチは五十代半ば、世界選手権優勝5回、当代の超一流。
マダーラは天才プレーヤーとして名高いですが、まだ三十前の若さ。
私が対戦したのは1998年フランス、リール市での世界ペア選手権。
まだほんの子供で、椅子に座っても机に届くかどうかという身長で。
これが。
切り札の分かれの悪い4
を軽〜くトランプ・クーでつくってしまう。
パートナーはNEC杯の常連、アルゼンチンのラベンナ(Pablo Ravenna)。
ダミーのラベンナに「今のプレー見た?」と話しかけたら。
何も言わずに微笑んでいるから。
このくらい難なく出来るんだな〜と察しました。