「ルール・オブ・500(ファイブハンドレッド)」。
「ルール・オブ・2&3(ツーアンドスリー)」の別名です。
名称に『ルール』とついてはいるものの。
フォース(fourth)ベストのリードカードに用いる「ルール・オブ・11(イレブン)」
は、論理的に「11」という数字が導き出されます。
ところが「ルール・オブ・2&3」とか、フォース(fourth)ハンド・オープンでの
「ルール・オブ・15(フィフティーン) : ピアソンズ(Pearson’s)・ルール、
ピアソン・ポイント」とか、「ルール・オブ・20(トゥウェンティー)」のように
目安に過ぎないものも多くありまして。
もっと紛らわしいのは「ロー・オブ・トータル・トリックス(Law of total tricks)」、
いわゆる「トータルトリックの法則」。『法則』とは名乗っているものの、マイク・
ローレンスとアンダース・ワーゲン共著 “I fought the law of total tricks”に
よりますと、Lott法則合致は40%、超過は34%、未満は26%。オークション
経過とハンドの持ち方によって微妙な修正(adjustment factor)を行わない
と使い物にならないようです。
これらは“RULE”とか“LAW”と名乗っていますが、コントラクトブリッジの
「規則」とは関係がありません。「定石」とか「目安」の類いです。コントラクト
ブリッジの規則は「ブリッジの規則(Laws of Contract Bridge)」があり、
競技ブリッジには「デュプリケートブリッジの規則(Laws of Duplicate Bridge)」
(最新版は2007年)が適用されます。
実のところは「ルール・オブ・ツーアンドスリー」も「ルール・オブ・ファイブ
ハンドレッド(500)」も死語寸前でして。
米国ブリッジ連盟発行ブリッジ百科事典(Official Encyclopedia of Bridge)
ではどうなっているかと言いますと。
「ルール・オブ・2&3」の項目は第4版(1984)、第5版(1994)にはあります。
ところが第6版(2001)、第7版(2011)では「ルール・オブ・2&3」の項目は
無くなり、「ルール・オブ・2,3&4(RULE OF TWO,THREE AND FOUR)」
に置き換わります。「ルール・オブ・2&3」はプリエンプティブビッドなど方々の
項目で言及はされても、「ルール・オブ・2&3」の項目は無いというありさまで。
エンサイクロペディアの編集上の問題点を浮き彫りにしています。
その「ルール・オブ・2,3&4」。
自分側だけバルのときにはパートナーに2トリックを期待して「ルール・オブ・2」、
自分側も対戦相手の側も互いにノンバルまたはバルのときにはパートナーに
3トリックを期待して「ルール・オブ・3」、対戦相手の側だけバルのときには
パートナーに4トリックを期待して「ルール・オブ・4」を適用します。
「ルール・オブ・2&3」の仕組み
| 対戦相手ノンバル | 対戦相手 バル |
味方バル | Rule of two | Rule of two |
味方ノンバル | Rule of three | Rule of three |
対戦相手がメジャーのゲームコントラクトのときは以下のスコアになります。
| 対戦相手ノンバル | 対戦相手バル |
味方バル | 420[500] | 620[500] |
味方ノンバル | 420[500] | 620[500] |
厳密に「ルール・オブ・2&3」を適用すると、ノンバルでは少し損をして、
バルでは少し得をします。
IMPチーム戦なら「その3 IMP、4 IMPは取りに行かない」範囲です。
何故なら対戦相手のゲームコントラクトがダウンすることがあるからです。
「ルール・オブ・2,3&4」の仕組み
| 対戦相手ノンバル | 対戦相手 バル |
味方バル | Rule of Two | Rule of Three |
味方ノンバル | Rule of Three | Rule of Four |
対戦相手がメジャーのゲームコントラクトのときは以下のスコアになります。
| 対戦相手ノンバル | 対戦相手バル |
味方バル | 420[500] | 620[800] |
味方ノンバル | 420[500] | 620[800] |
対戦相手がメジャーのスラムコントラクトのときは以下のスコアになります。
| 対戦相手ノンバル | 対戦相手バル |
味方バル | 980[1100] | 1430[1400] |
味方ノンバル | 980[1100] | 1430[1700] |
対戦相手がゲームでもスラムでも、計算上はスコアを損します。
それにもかかわらず派手目にプリエンプティブビッドをするということは、
プリエンプティブビッドをすると得することが多いことを、プレーヤー達の
経験が物語っているからでしょう。
記事
スコア計算 ダウンしたとき の1990年の世界選手権に於ける
Westのオープニングビッドを見ていただけばわかるように、
プリエンプティブビッドは1990年前後が世界的に一番激しかったです。
2000年代頃から少しまともに戻っています。
例を挙げます。
7枚、6勝7敗ハンド。
3
オープン。
味方だけバルのときにはパスが妥当。
対戦相手だけバルのときには4
オープン
する人もいるでしょう。
8枚、7勝6敗ハンド。
4
オープン。
対戦相手だけバルなら5
オープンも。
8枚、7勝6敗ハンド。
4
オープン。
7枚、7勝6敗ハンド。
4
オープン。
7枚、7.5勝 5.5敗ハンド。
4
オープン。
2015年1月 日本リーグ 第14ラウンド2番ボード
IMP戦
ディーラー
味方ノンバル
対戦相手バル
Weak 2
オープンに見えます。
Weak 2
を使っていない人の多くは3
オープンしたようです。
ディールは以下の通り。
Eastに3
オープンされると、NorthもSouthも身動きが取れません。
W | N | E | S | |
| | 3 | P | P | P | |
|
3
by E、2〜3ダウン
NS+100〜150
3NT by NS
NS+660〜690
「ルール・オブ・イレブン」はディフェンスのサードハンドでの適用が想定
されています。ところが以下のようにディクレアラーも使うことが出来ます。
3NTに対してオープニングリードは
6。
第1トリックは
6→2→9、と進みます。
「
6」に対して「ルール・オブ・11」を適用
すると、11−6=5。右手には
9よりも
高い
のカードは無いことが判ります。
そのように考えるよりも、見えている
の
カードは「A、Q、10、9、7、6」
『数独』を試みれば「KJ86」からの
フォース(fourth)ベストと判ります。
そこで第1トリックを
Aで勝ち、ダミーの
Qをエントリーにします。
で3トリックを取るには、手元からスモールをリードするのが成功率が高い。
3+
2+
2+
2個を取って、9トリックです。
だいぶ前にブリッジプロの先生方に、「ルール・オブ・11」って使っている?
と聞いたところ。誰も使っていませんでした。
「ルール・オブ・2&3」については聞くだけ無駄なので聞きませんでしたけど。
そう言えば、「トータルトリックの法則」と似たものに
「トータルトランプの法則(Law of Total Trumps)」というものもありまして。
そのこころは、
「ディクレアラーになったなら、味方側の切り札の合計枚数は、対戦相手側
の切り札の合計枚数よりも多くなければならない」
です。