このところ毎晩寝る前に、
“The art of declarer play ”という本を読んでいまして。
これを読んでいたから今月はブログの更新が進まなかったということも
あるのですが。
ティム・バークというオーストラリアの人と、ジャスティン・コーフィールドと
いうアイルランドの人の共著で。
上級者向けと言いますか、
ふつうのスローインやスクイズの類いは説明不要の前提で書かれています。
したがって
“East is Morton’s Forked on this trick”
とか、
“but this is really not the right book for such optimistic musings”
とか、
“There may be books where pleasant things happen for declarer,
but this is not one of them”
というような表現が随所に出てきて。読者を突き放します。
全64ハンド、386頁。
なかなかの量ですが、読んでいると徐々に慣れてきて早さがつきます。
この辺りは「数学」の勉強と似ていて。
「数独」と似ていると言ってもいいでしょうが。
難しい問題でも時間さえあれば解ける人ならたくさんいても、
制限時間内となると別物で。
日頃からたくさん問題を解いていないとスピードはつかない。
早くて正確。
「早くて不正確」ではいけない。
ブリッジのプレーやディフェンスでも時間さえあれば解けるというか、
少なくとも理論的には正しい方針が見つかるのでしょうが。
あいにくブリッジは “timed event”でして。
制限時間がある。
限られた時間内に解こうとすると、必要なのは練習というか訓練というか。
数をこなせば早さと正確さが身につくのは何でも同じでしょう。
『祇園 さ々木の…』という題の本だったと思いますが、
本というのは読み返したくなると行方不明になるもののようで。
代わりに目につくのは『その女アレックス』みたいな宣伝につられて買って
読んだはいいものの、筋の薄さがおどろおどろしい描写に包まれていて。
インディ・ジョーンズの映画『クリスタル・スカルの王国』で、いきなり最後に
宇宙人が古代遺跡のUFOで飛んでいくオチに似て。
なんだそりゃ、というガッカリ感が。
京都の「さ々木」という名店の佐々木料理人によると、
若いうちに大型旅館の厨房に勤めると「手が早くなる」そうです。
手の早さは、のちのち役に立つと。
そう言えば私の長年の生徒のひとりが最近になって、
教室テキストのタイプミスや文章ミスをやたらメールで送ってきて。
どうしたのかと聞いたら、
「先生のプリントが山のようにあるのでそろそろ処分しよう」
ということで片っ端から読んでいるらしく。
その生徒が短期間のうちにすごく上達している。
こういうことは先生の側からはよく見えるものでして。
もともとそれだけの実力はあったのですが。
正解に至るスピードがぜんぜん違う。
要は練習というか訓練なのでしょう。
私も最近では活字の「3」と「5」を見まちがえるなどざらでして。
この辺が本の出版には編集者が必要な所以で。
海外のブリッジ雑誌には「新刊書紹介」みたいな企画があるのですが。
良い本だがタイプミスや編集が良くない、などの指摘を受けるのは
編集者なしで著者だけで出版している本です。
私もプリントの間違いを指摘して頂けると助かります。
“Adventures in card play”
ゲーザ・オトリク(ハンガリー)と ヒュー・ケルシー(スコットランド)の
共著で1979年に出版された300頁弱の本ですが。
何回も増補されている歴史的名著で。
内容がやたら難しい。
しかも昔のブリッジの本は説明が不親切。
読むなら新しい本の方が色々な面で優れています。
ブリッジを教えている人は大勢いて。
「かったるい」と正直なところ思っている先生も多いかと。
ブリッジが上手な先生ほど、生徒さんとのギャップというか実力差というか
ブリッジ力の差が大きいほど、教えるのが苦痛なのかもしれません。
しかしながら。
先生自身も“student of the game”のひとりであって欲しいものです。
“The art of declarer play ”第210頁
コントラクト: 7NT
オープニングリード:
10
ビッド経過に異論はあっても最終コントラクトは妥当。
ウィナーは12個。
問題は
の4-0の分かれ。
オープニングリードから、左手に「
Q」は無い模様。
というか、7NTに対してわざわざ
スーツの「Q10…」から「10」を
選んでリードする人はいない。
Qは右手に想定。
第1トリックを
Aで勝ち、先ず
Kを取る。
左手の4枚
はフィネスして仕上がり。
右手の4枚
は、
Qを抱えている限りは
と
の両方を抱え込むことは
不可能であると。
果たして。
5枚
を走る。
「ハンドのビジュアル化」については2013年2月の記事に書きましたが、
2014年に発行されたこの本でも VISUALIZATIONという表現で
ディール全体の視覚化を求めています。似たことを考えるもので。
最後の7枚。
手元の最後の
を取る。左手は
を捨てる。ダミーは
を捨てる。
右手は
Qや
を捨てる分けには行かない。
を捨てる。
右手は3枚の
と
Qを残すので、
は2枚以内になるということです。
ここから左手を
と
のシンプルスクイズに仕上げるのは朝メシ前で。
So long as the
Q was indeed in the East hand,this one
was ice cold. と締めくくられています。
ずいぶん前の話になりますが、アルフレッド・シャインウォルドと夕食で
同席する機会があって。
ブリッジ界の長老だから聞いてみようと。
何で “ice cold”って言うんですか?
返ってきた答は「何でだろうね〜」でした。
野球のコールド・ゲーム(called game)とは違うし。
BBOディスカッション・フォーラムでも侃々諤々です。
興味のある人は見てみて下さい。
リンク →
what-is-a-cold-contract