「グランドスラム・フォーシング」 ではなく 「グランドスラム・『フォース』」、
grand-slam force(GSF)。
切り札の「AKQ」のうち2枚あったらグランドスラムに行け。
通称 「ジョセフィーヌ」。
発案者はエリー・カルバートソン(Ely Culbertson、1891-1955)。
1920年代中盤から40年代にかけての「ミスター・ブリッジ」です。
カルバートソンの助手がこのコンベンションをブリッジ雑誌に寄稿したとき、
故意か手違いか、奥さんの「ジョセフィーヌ・カルバートソン(Josephine)」
の署名記事にしてしまったそうで。ヨーロッパでは今でもグランドスラム・
フォースのことを「ジョセフィーヌ」と呼ぶようです。
カルバートソンはブリッジに関するものはもとより、カルバートソンブランドの
ひげ剃りクリームから酒まで売って、大恐慌時代の米国に一大産業を
興したそうで。認定ブリッジ教師が6千人以上いたとのことです。
1950、60年代の「ミスター・ブリッジ」はチャールズ・ゴーレン(1901-1991)。
売れた本は1千万冊。
そういえば昔の「JCBLスタンダード」は「ゴーレン」システムでした。
このような話を大先輩から聞いたことがあります。
終戦後の占領米軍の将校クラブでは定期的に競技会が開催されていて。
参加料は高価いが、賞金も高価い。「ゴーレン」で練習して行き、小遣い稼ぎ
をしたと。対戦相手の米国人達は「カルバートソン」だから、ビッドの正確さで
負けることは無かったと。ちなみにディレクターの報酬はラッキーストライク
1カートンだったとか。闇市で高価く売れたそうです。
ブリッジの歴史的なことに関しては最近に出版された本ですが、
“Bumblepuppy Days”(副題「ホイストからブリッジへの進化」)に詳しく。
「バンブルパピー」は今や死語ですが、ホイストの下手な人達のテーブル、
ホイストの下手なプレー、ホイストの下手な人などの意味だそうです。
著者の ジュリアン・ラダーマン(Julian Laderman)は、面白くなかったら
代金をお返ししますと。電子メールや郵便での催促は駄目で。試合会場で
声をかけて下さいと。本の内容について質問をして。本当に読んだことが
確認できたら、その場で返金すると。ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットの
ふたりには遠慮して欲しいと。
260頁ありますが、一気に読めるくらい面白いです。
またしても長い前置きでした。
2014年 日本リーグ
ディーラ:W
NSバル
3
= トランスファー(
)
4
=
4枚以上のスーツ
4
= 切り札設定
5
〜5
= コントロールビッド
5NT = GSF
2011年 朝日新聞社杯
ディーラ:S
NSバル
2
= Fourthスーツ
3
= Fifthスーツ(Notrump probe)
4
= コントロールビッド(
A)
4
= コントロールビッド(
A)
4
= コントロールビッド(
A)
5
= コントロールビッド(
K)
5NT = GSF
2014年 プライベートゲーム
ディーラ:S
EWバル
3
=
ポジティブ
5NT = GSF
オープナーから見て、
が6枚以上あるか、
が5枚のときには
Kがあるはずです。
3
=
ポジティブ
4
= トランプセット
4
= コントロールビッド
4NT = RKCB1430
5
=
Qアスキング
6
=
Q有り
ここでビッドの問題をひとつ。
米国「ブリッジワールド」誌 2012年2月号から
ペア戦 NSバル
5NT = GSF
「
AK」があるので7
をビッドするのは容易い。
ペア戦なので7NTを視野に入れたいということです。
26名のパネル回答者の選択は以下の通り。
7
= 17、7
= 3、6
= 3、6NT = 2、7NT = 1名。
すなわち
Aを7の代でビッドすることによって、
AKがあることを
同時に表そうとする工夫です。
それにしても、この経過で「5NT」をビッドするからには、かなり強い
ハンドで、なおかつ、
、
と
のファーストラウンド・コントロールが
あるはずです。
ということは
はボイドではなかろうかと。
しかしながら
がボイドなら「5
」とEKCB(ボイドウッド)を使うのでは
ないかと。
ということはダブルボイドではないか。
いや、それなら対戦相手も何かをビッドして来そうだ。
待て、対戦相手はバルだ。それならビッドに入れない持ち方はあり得る。
いずれにしても
Aを表しておいて損は無いだろう、ということです。
2014年 NEC杯
ディーラ:E
EWバル
P* = ポジティブ
4
= スプリンター
5NT = GSF
Northのハンドは:
Q6
AKQ1076
4
QJ54。
キングの5枚サポートがあるので良いグランドスラムですが、
10枚フィットをどのように表すか?
5NTに対するレスポンスで、単に「シックス」または「セブン」と
答えるだけでなく、より詳細に答える方式があります。
以下に紹介します。
「5NTグランドスラム・フォース」に対する一般的な「ステップレスポンス」
切り札 | Spade | Heart | Diamond | Club |
Seven | AKQのうち2枚 | 2枚 | 2枚 | 2枚 |
6S | A or K、長さ余裕 |
6H | A or K | A or K |
6D | Q | Q | A or K |
6C | AKQのうち0枚 | 0枚 | 0枚 or Q | 0〜1枚 |
「長さ余裕」は10枚以上のフィットを表します。
6
〜6
のステップを「逆」にした方が、もっと良いのですが。
例えば「6
= A or K」、こののち「6
= 枚数に余裕ありますか?」
のように。しかしながら一般向けではないようです。
もうひとつの方法として、
が切り札のときは「5NT」がGSFですが、
切り札では「5
」、
切り札では「5
」、
切り札では「5
」をGSFに
使う取り決めがあります。キックバック(kickback)と言われる手法ですが、
これも一般向けではないようです。
なお以下のようなビッド経過では。
2
= 2オーバー1 GF
3
= セルフサポート・スーツ
すでに強力なスーツが表されたあとでグランドスラム・フォースを使うと、
「切り札のAKQのうち2枚」という意味ではなく、
「サポートが無いけどそれでもグランドスラムに行けるか?」
という意味になります。
2
= 10点以上[スタンダード]
3
= 16点以上
4
= トランプセット
4
/4
= コントロールビッド
5NT = GSF
いまふうだと以下のように進みそうです。
1NT = フォーシング
4
= トランプセット
4
/4
= コントロールビッド
4NT = RKCB
RKCBで切り札の「AKQ」の有無が確認できます。
この経過でレスポンダーは
のエースもキングも無いことがあるので、
6
でダウンすることもあり得ます。「5NT」は安全ではありません。
Exclusion Key-Card Blackwood (通称「ボイドウッド」)の約束が
あれば、以下のように進めることができます。
5
=
EKCB
(
ボイドでRKCB)
5
= ワンキーカード
キーカードが0枚のときには「5
→5
→P」となります。
最後の2例で見られるように、RKCBやEKCBを使うと、切り札の内容の
確認にGSFを使うことが少なくなります。
(参考リンク →
EXCLUSION BLACKWOOD)
(参考リンク →
EXCLUSION BLACKWOOD - 2)
そこで登場するのが「5NT ピック・ア・スラム」です。
(参考リンク →
5NT ピック・ア・スラム)