「5NT ピック・ア・スラム(pick-a-slam)」
パートナーに対して最終コントラクトを、6の代で選ぶことを求める5NTのビッド。
“PASS(Pick-A-Small-Slam)”とも言うようです。
ローマンキーカード・ブラックウッド(RKCB)やエクスクルージョン・キーカード・
ブラックウッド(Exclusion Key-Card Blackwood = ボイドウッド(Voidwood))
の普及により、「5NT グランドスラム・フォース」は劇的に出番が少なくなりました。
最近では RKCBは使っていても、GSFは知らないという人も多くて。
ブリッジ歴の長い方は絶句されることでしょう。
米国「ブリッジワールド」誌 2003年9月号から
IMP戦 EWバル


パートナーは非常に強いアンバランスハンドを表しました。
6〜7枚の

と4枚

とか。6枚

と5枚

かもしれません。

ボイドの可能性は極めて高く。
5

をパスするよりも、スラムのことを考えます。
パートナーの

が「AQJxxx」なら6

、

が「KQxxx」なら6

。
また

が「Ax」なら、6

でコントラクトする余地もあります。
このようなときに使うのが「5NT ピック・ア・スラム」。
6

、6

か6

を選ばせます。
パネル回答者31名の選択は以下の通り。
5NT = 19名、6

/パス = 各4名、6

/6

/6

/7

= 各1名。
バーコビッツ(David Berkowitz)とコーエン(Larry Cohen)の
共同解説によりますと:
「ピック・ア・スラム」は40〜50年ほど前に発案された。
上級者の間で一般的になったのは、この20年ほどのこと。
(これは2003年の記事ですから、現在からは30年前になります。)
グランドスラム・フォースの出番は去り、ピック・ア・スラムの時代だと。
特に5NTが「ジャンプビッドで無い」ときにはピック・ア・スラムである。
米国「ブリッジワールド」誌の読者投票による 「2001年版 ブリッジワールド・
スタンダード」では、上級者のほとんどが「パートナーとの打ち合わせが無い
オークション経過で、5NTのビッドが複数の意味を持ち得るときにはピック・
ア・スラムになる」という意見を支持して、グランドスラム・フォースを支持する
票を大差で上回りました。(BWS poll question No.115)
2009年にコーエンは自分のブリッジサイトに、
「特に5NTがジャンプビッドのときはピック・ア・スラム」、
「1NTオープン→5NTレスポンスもピック・ア・スラムが良い」と書いています。
素直に受け入れて良いものやら。
以下に検討を進めて行きます。
米国コントラクトブリッジ連盟刊「ブリッジ百科事典(Encyclopedia)」には、
“5NT BID”、“GRAND SLAM FORCE”、“TRUMP SUIT QUALITY”
の項目にピック・ア・スラムの記述があります。いまどきは、「切り札が確定
していない状況での5NT」はピック・ア・スラムに使うのが圧倒的多数である、
ということで一致しています。
ところが“PICK A SLAM”という項目が無いのは編集部の不注意か。
はたまたCD版での検索機能に頼っているのか。
以下の2例が載っていました。

W | E | 1NT | 2 | 2 | 5NT | |
|

のスラムは、先ず切り札に

を設定してからRKCBに持ち込みます。
ですから5NTをGSFとして使う必要はありません。
ここでの5NTは、

以外の4つのデノミネーションから1つを、6の代で
選ぶことを求めています。
(denomination = ストレイン(strain)= ノートランプ&

&

&

&

)


5NTは、両方のマイナースーツと、

でコントラクトする余地のある
2枚サポートを表します。
ラリー・コーエンのブリッジサイトには以下の例が。

W | E | 1 | 2 | 2NT | 5NT | ? |
|

5NTはピック・ア・スラム。



これなら6

。 これなら6

。 これなら6NTが良いです。
ブリッジサイト“Bridgebum”には、マーティ・バーゲン(Marty Bergen)の
“Slam Bidding Made Easier”から引用した以下の4例が載っていました。


5NT = P-a-S


5NT = P-a-S
6

= 4枚スーツを下からビッド
33点ありますが6NTはかなり苦しいです。


5NT = P-a-S
6

= 強力4枚スーツ
33点ありますが6NTは全然駄目で。
6

は3枚

の側で

を1回切って
1個負けて12トリック目です。


5NT = P-a-S
6

= 良い2枚

サポート

ラフが12個目のトリックです。
ブリッジサイト“Bridgehands”には、先と同じバーゲンの本から
以下のハンドが引用されています。


ピック・ア・スラムを使っていないと

のフィットを探すのは容易では
ないと思われます。
ブリッジサイト"Bridge Winner”には、ガンバーツ(Andrew Gumperz)による
詳細な記事があります。
ディビッド・バード(David Bird)とバーバラ・シーグラム(Barbara Seagram)の
共著“25 More Bridge Conventions”からの引用もありました。


実際にあったハンドではありませんから。
都合の良いハンドを都合の良いタイミングで持つ話ばかりで。

W | N | E | S | |
1 | 5 | 5NT |
|

現場でこんなに上手くいくかどうか。
いささか眉唾でして。
オークション経過によって「5NT」が「グランドスラム・フォース」になるか、
「ピック・ア・スラム」になるかは微妙な問題です。
4NT(RKCB)に引き続く5NTの類いはキングアスキング。これは決まり。
ピック・ア・スラムを使うときには、グランドスラムには興味が無いこと。
「切り札の設定」に成功しているときには、5NTはグランドスラム・フォース。
1NTオープン→5NTレスポンスは(クォンティタティブ(quantitative = 量的)
ビッド)で「7NT」の誘い。
このくらいにしておくのが妥当かと思われます。
「グランドスラム・フォースは捨てる」という意見も散見されますが。
キット・ウルジー(Kit Woolsey)は、「ビッド経過から4NTがRKCBになる
ときに、ダブルジャンプの5NTのビッドはグランドスラム・フォースになる」と
いう取り決めを提案しています。
これも完璧と言えるかどうかは微妙でして。
「1

-3

:5NT」もそうなのか?
と言われるとグッと詰まります。
このビッド経過ではボイドがあったらEKCBが使えるので、グランドスラム・
フォースの必要性があるのはダブルボイドのハンドだけで。

と何かの
ツースーターの可能性は捨てきれません。
行き違いを無くすために、もしグランドスラム・フォースを残すのなら、
「切り札が確定しているとき」に限定するのが良いと思われます。
2002年 セクショナルSTFペア ディーラ:W ノンバル


ここでの「5NT」は、「グランドスラム・フォース」と「ピック・ア・スラム」で
重複しています。
グランドスラム・フォースなら7

のビッドは容易。
ピック・ア・スラムを使う約束をしているときには、Northで「7

」を言うか、
「5

」とキュービッドしてグランドスラムに誘うことになります。
「ピック・ア・スラム」についてはまたの機会に特集を組みたいと思っています。