ブリッジの話は日本人同士で通じればいいわけですが。
オンラインで外国人とブリッジテーブルを囲む人もいるし、
海外のブリッジ大会に参加される方も増えて。
「ブリッジの和製英語」
一応は知っていた方が良いかと。
ゴルフでは和製英語はたくさんあるそうで。例えば、
「カップ(hole)」
「アゲインスト(headwind)」
「フック(bend to left/break left)」
「ニアピン(greenie/closest to the pin/KP)」
とか。
野球の和製英語もたくさんあるようで。
「ナイター(night game ← day game)」
「デッドボール(hit by pitch)」
「ノーコントロール(bad control/lack of control)」
等々。
「ハイタッチ」が本当は“high five”であると。
若い人達は“high five”しか知らないかもしれないし。
主なブリッジの和製英語を紹介します。
「サイン」
コントラクトブリッジに「サイン」はありませんの。
胸に手を当てたら心臓だから「
リードが来て欲しい」とか。
指輪の
を触るとか。
このようなブロックサインなど出そうものなら大騒ぎ。
ブリッジのディフェンダーが出すのは「シグナル」です。
カモンシグナル、カウントシグナル、スーツプリファランスシグナル等々、、。
ちなみにカモン/ノンカモンは俗称で。
昔にブリッジを流行らせようとした人達は、
とおりのいい言葉をブリッジ用語に選んだわけです。
正式名称は Attitude シグナルと言います。
「シャットアウト」
“Shut out bid”というのは「プリエンプティブビッド」のことです。
パートナーをシャットアウトするということは、普通ならしないものでして。
「メジャー優先」
いつでもどこでもメジャーを先に言いましょう、ではありますまい。
1
オープンに対して、将来的に
でコントラクトするつもりの無いハンドは、
スーツよりも4枚『メジャー』のレスポンスを『優先』させる。
あくまで、
「1
オープンに対して」
です。
正確には「バイパス・ダイアモンド」と。
“Bypass daimonds if not strong enough to force to game.”
「オートマチックダブル」
こんなブリッジ用語ってありませんけど。
例えば1
オープンして、1
オーバーコールされて、パス、パスと
廻って来たら。
ネガティブダブルを使うペアの約束があるときには、
オープナーは
が短いハンドは「ほぼ自動的」にリオープンします。
たとえば、
4
A753
KQ9
A8642
のようなハンドは「ダブル」でリオープンします。
レスポンダーが「1
ダブル」を待ち受けていることがあるからです。
しかしながら、
KQ74
963
A7
A852
のようなハンドでは1
でパスをします。
味方に良いコントラクトは無く。
対戦相手は冴えないコントラクトにいるからです。
「アールケーシー」
ケーシータカミネ?
4文字なら Roman Key Card Blackwoodで “RKCB(アールケーシービー)”。
3文字だと Roman Keycard Blackwoodで “RKB(アールケービー)”。
WBF(世界ブリッジ連合)ではコンベンションカードの略号として
“KCB”(Key Card Blackwood)を指定しています。
なお「コンベンションカード」は、現行の規則では「システムカード」と言います。
「ドロップフィネス」
私は活字では見たことがありません。
米国ブリッジ連盟発行「ブリッジ百科事典」“ACBL Encyclopedia of bridge”
2011年(最新)版に該当項目無し。
オンライン“The Bridge World Official Bridge Dictionary”に該当項目無し。
正しくは“pin”または“pinning play”と言うようです。
「ボスウェイフィネス」
ENCYCLOPEDIA 該当無し。
BRIDGE DICTIONARY 該当無し。
正しくは“two-way finesse”と言います。
「チェンジ」
[誤] Eastは
リードをエースで勝ち、スモール
に「チェンジ」した。
[正] Eastは
リードをエースで勝ち、スモール
に「シフト」した。
[正] change of suit response
ひらたく言うと、ニュースーツのレスポンスのことです。
「じゅうさん」
拾参?
Thirteen?
“KING”のこと?
「カット」
切り札で「切る」ことは「トランプする(trump)」とか「ラフする(ruff)」とか。
「ぶった切る」にしても “cut” とは言わない。
“cut”は、“shuffle and cut”。
カードをシャッフルしてから、カットする。
最近では手でカードをシャッフルすることは少なくなりましたけど。
リフルシャッフル(riffle)。
52枚のカードを半分ずつ両手に分けて持ち、これを両側からバラバラと混ぜる。
これを7回やると、よく混ざっている、というか、正しく混ぜられていると。
6回で十分だという調査結果もあるようです。
花札のヒンズー・シャッフルは混ぜている気分になっているだけで。
ちなみに和式は「縦に」持ちますが、洋式はカードの「横方向(長い方)に」
落とすように混ぜます。
「オーバーハンド・シャッフル」と言います。
シャッフルののち、カードの山をいくつかに分けることを、また、分けたのちに
ひとつに重ねることによって順序を入れ替えることを「カット」と。
ふたつに分けて上下を入れ替えることを「ストレートカット」と言います。
「バービッド」
“bar”というのは「禁止する」。
「パートナーにパスを命令する(demand)コール」のことです。
この言葉、最近は使われないようで。
ENCYCLOPEDIA には“BAR BID”の項目は無く、
“BAR,BARRED”だけがあります。
いずれも「規則によって禁止される」ときの言葉として解説されています。
「サインオフ」
“signoff”
「パートナーにパスを要求する(request)コール」。“bar”と同義。
または。
オークションの終了を意図するビッド。
「ベターマイナー」
昔とは違う意味で使われるようです。
ENCYCLOPEDIA 最新版には“better minor”、“best of minor”とも
該当項目が無く。
BRIDGE DICTIONARY には、
「4=3=3=3及び3=4=3=3の形のハンドで、内容良い方のマイナーで
オープンする約束」と説明されています。
グラノベッター夫妻共著の CONVENTIONS AT A GLANCE ではどうか。
1993年版には、
4=4=3=2 を1
オープン、
4=4=2=3 を1
オープン、
4=3=3=3 を1
オープン、
3=4=3=3 を1
オープン
することとなっていて。
2004年版も同上。2010年版と2014年版では項目が無くなっています。
どうやら死語となってきているようで。
「ショートクラブ」
BRIDGE DICTIONARY によると、
「4枚のメジャーでオープン出来ないシステムでの、3枚での1
オープン」
となっています。
CONVENTIONS AT A GLANCE(2014年版)によりますと、
「こんにちでは多くのペアが1
オープンを4枚保証にしているので、
4=4=3=2の形は(2枚で)1
オープンする」となっています。
ENCYCLOPEDIA に至ってはページによって書いてあることが違っていて。
223頁には「2枚スーツでの1
オープン」、
360頁には「3枚スーツでの1
オープン」
と解説されています。
これが ENCYCLOPEDIA の欠点で。
項目ごとに違う人が担当するので、執筆担当者が個人的意見を好き勝手に
書いている節がありまして。なかなか怪しいです。
書評に「最新版のは必要なく、昔のでも十分だ」と書かれる所以でしょう。
ショートクラブ、おそらく今は移行期で。
将来は「2枚での1
オープン」という意味になるものと思われます。
「マキシマル・ダブル」
厳密には「マキシマルオーバーコール・ダブル」ですが。
ENCYCLOPEDIA では“MAXIMAL DOUBLE”となっているので間違い
とは言えないのでしょう。
本当にこの本は細かいところはいい加減で。
「マキシマルオーバーコール・ダブル」は、「マキシマルオーバーコール」または
「マキシマルオーバーコールのレイズ」に対する「ダブル」でして。
“maximal overcall”とは。
1
オープン直後の2
オーバーコールとか。
1
オープンに対する2
オーバーコールとか。
「ま下」のランクのオーバーコールです。
で、「ま下のランクのスーツでのオーバーコール」に対するダブルや、
「ま下のランクのスーツでオーバーコールのレイズ」に対するダブルを
ゲームインビテーションの意味に使うコンベンションを
「マキシマルオーバーコール・ダブル」と言います。
従って、
これはマキシマルオーバーコール・ダブルで、4
インビテーションですが。
これはマキシマルオーバーコール・ダブルではありません。
というか、マキシマルオーバーコールでは無いので
マキシマルオーバーコール・ダブルにはなりません。
「ここがヘンだよ日本人」というテレビ番組がありました。
1998〜2002年、週1回、22:00からの1時間。
TBS系列の討論バラエティ番組です。
そこそこの視聴率があったので、観ていた方も多いかと。
「ここがヘンだよ」とガイジンに言われて、
「ニホンジンの勝手でしょ、ここは日本だし」
ということで盛り上がるわけです。
そこで。
「ここがヘンだよ日本人のブリッジ用語」
「バッド(bad)2NT」
とか、
「メジャーダブル」
とか。誰が名前をつけたか知りませんが。
「ハーフ(half)ストッパー」
これは死語で。
ENCYCLOPEDIA にもBRIDGE DICTIONARY にも載っていません。
今は“partial stopper”と言います。「パーシャルストッパー」です。
「接近原理」
“approach principle”というブリッジ用語は、ありません。
“approach forcing”というブリッジ用語は、あります。
むかしはパートナーの1
オープンにレスポンダーが1
をレスポンスしても
フォーシングではありません(すなわち「パス有り」)でした。
こんにちでは一般的な、レスポンダーのニュースーツが(最低でもワンラウンド)
フォーシングというビッド体系をアプローチフォーシング(アプローチフォーシング
原理)と言います。
コントラクトブリッジが現在の形になったというか、ハロルド・バンダービルトに
よって発案されたのは1925年。
1930年にカルバートソンはContract Bridge Blue Book という本を著して
ベストセラーになりました。この本で発表されたのが当時としては画期的な
“principles of approach-forcing bidding”でして。
直訳すると「接近強制ビッドの原則」となるのでしょうか。
何で日本では「1NT-4NT」のビッドだけが「接近原理」と呼ばれるように
なったかはわかりません。
英語のブリッジ入門書には、1NTオープンに対する4NTのレスポンスは
“quantitative bid(クオンティタティブビッド)”と書いてあります。
quantity は quality の反対語で。「量的ビッド」という意味です。