日本のブリッジディレクターは本当によくやっていると思います。
よく勉強しているし、採点機器もよく使いこなしているし。
ディレクターの負担は増える一方でして。
規則そのものが複雑に。
規則の解釈も複雑に。
そのうえ注釈、運用指針等々。
ムーブメントが複雑に。
海外では単純なハウエルとミッチェルだけの国がほとんどです。
スコア集計コンピュータソフトも複雑に。
何と言っても昔は手計算でした。
今のソフトはバージョンが上がる度に操作が複雑になる奇っ怪さ。
ブリッジメイトも使うようになりましたし。
外国で、これだけ出来るディレクターに出会うことはまれです。
私は30年前のJCBL第1回ディレクター試験の受験者でして。
試験とは言っても問題を与えられて、回答はレポート提出でした。
なみいる大先生方とともに。この問題が、あの問題が、と勉強しました。
「個人戦のレインボームーブメントについて書け」
などと問われたって。
みんなで末松茂久さん(会員番号1番、故人)に聞きに行きました。
だいたい、規則が変わりすぎる。1928年の制定以来。
1933、1935、1943、1949、1963、1975、1987、1997年。
最近では2007年の規則改定は大きく。
そろそろ普通の人にはついて行けない難解さです。
次の改定は2017年に予定されていますが、大きくは変わらないようで。
よかった。
いや、変えてくれなくてもいいのですが。
いまの規則は世界選手権レベルには不備、ふつうのゲームには複雑すぎる
という声もあり。
決めているのは世界ブリッジ連合の法規委員会、10人弱。
どのように運用するかの指針を出さずに先ず規則を変えます。
現場で判例がたまるのを待つ。
そりゃ現場は混乱しますよ。
みなさん驚かれますが WBF(世界ブリッジ連合)主催の世界選手権でも、
まともなディレクターは多くはなく。
確認の為にディレクターに質問しても、大会要項すら読んでいない人ばかり。
裁定ミスなんかざら。
あげくに人種差別主義者までいるし。
先日のゴルフ全英オープンで松山英樹がスロープレーで1打罰を受けたとき、
同組の米国の選手が「酷で不公平」と怒りを露わにしたのと同じです。
もちろんまともなディレクターもいます。
この数年で良くなったかと思いきや、参加者に聞くと相変わらずのようで。
二カ国語、三カ国語を話せるディレクターを優先して採用するから、
規則の知識は二の次で。
国際試合のディレクターの認定制度なんてありませんし。
2011年にWBFの Tournament Directors’Regulationが発効したばかりで。
ディレクターの認定試験すら行っている国は少なく。
JCBLは大したものだと思っています。
ただ、ディレクターの呼び方が問題で。
トラブルを起こした本人が呼べばいいのに。
シレッとして。「じゃあ呼んで下さい」などと開き直ってたりして。
テーブル上のトラブルは当事者どうしで争わないこと。
これにつきます。
ディレクターを はさんで話をします。
言いたいことはディレクターに向かって言うと。
開始直後にトラブルが多いのは当然として。
終わる直前にディレクター騒ぎが多いのは気がゆるむからでしょう。
最終ラウンドでディレクターがてんてこ舞いしているときには、
トラブってもディレクターを呼ばないで不利なスコアに甘んじる人もいます。
最終ボードで、いつもならしないような失敗(ビッド、プレー、ディフェンス)を
することを「ラストボード・シンドローム」というようです。
ご用心を。
サッカーのワールドカップを観ていると、まれに。
「ゴール入ってるじゃん」
世界中がゴールが入っているのを観ていても、
主審ひとりが見ていないだけで、点が入らない。
よく戦争にならないものだと思っています。
国際サッカー連盟は審判の助けに電子装置を使うのは嫌みたいですが、
さすがに「ゴール」だけはまずいという話になったようで。
ボールに電子素子を入れるようになるとは聞いています。
ブリッジ規則の運用、解釈、判例どこから見ても「アウト」というときでさえ、
いつまでもディレクターに喰ってかかる人もいて。
サッカーでレッドカードを喰らっている選手いますね。
ディレクターに対する無礼は、当該セッションの退場措置があります。
最近の全米チーム選手権(Vanderbilt杯)。
ベスト16での勝敗が覆ることがありました。
あるボードで、もしビッドが正しく説明されていたら、
オープニングリードに別のものを出すので、コントラクトがダウンする…。
ディレクターはこの言い分を認めないで「メイク」と裁定。
上告委員会は言い分を認めて「ダウン」と裁決。
昨夏の全米チーム選手権(Spingold杯)の準々決勝では。
ディレクターが、片側だけプレーの終わったボードをキャンセルして
ひと悶着あったようで。キャンセルの理由はスロープレーのようです。
ゴルフでは、スロープレーの警告を受けると、みんな急にプレーが早くなると。
全英オープンの松山の件では、警告を受けたことを本人は知らなかったようで。
言語の問題を起こしたようです。
ブリッジでも、ディレクターに警告を受けるまではゆっくりプレーして構わないが、
警告を受けたら 「対戦相手よりは、早くプレーする」ことが肝要と言われています。
いずこも同じで。
いつも思うのですが、テーブル数が少ないときには、
担当ディレクターはテーブルに張り付いていればいいのに。
チーム戦世界選手権の決勝だと 2テーブルしか無いのですが。
ディレクターがテーブル際にいないから、事実関係の認定に
もめることがあるようです。
ブリッジではなぜ「ディレクター(director)」なのか。
なぜ「審判」ではないのか。
なぜ「レフリー(referee)」、「アンパイア(umpire)」や「ジャッジ(judge)」
ではないのか。
多くの人にとってコントラクトブリッジは娯楽ですから。
トーナメントディレクターは「競技会運営現場責任者」で。
参加者を気持ちよく向かいいれ、気持ちよく送りかえす。
「今日は楽しかった、またブリッジしよう」という気にさせて下さい。
だから。
参加者にどんどん呼んでもらえるディレクターは良いディレクターで。
「あのディレクターは呼びにくい」
とか
「あのディレクターは呼んでも仕方ない」
と思われるようではアカンのです。
「本日は雨のなか、高松宮記念杯においでいただき
ありがとうございました」
とディレクターに挨拶されたときには私も恐縮しましたけど。