レベンソール(Lebensohl)コンベンション。略語は LEB。
この記事は3部作で構成されています。
レベンソール(1)は、対 Weak Twoでの使い方。
レベンソール(2)は、1NTオープンにオーバーコールが入ったときの使い方。
レベンソール(3)は、関連シークエンスや応用、変形などです。
「レベンソール」の名称については、米国ブリッジ連盟会報2010年4月号と
米国ブリッジワールド誌2010年6月号に詳しいです。
要するに、ジョージ・ベーム(George Boehm)氏が
ブリッジワールド誌1970年11月号に Lebensohl を、
Kenneth Lebensold 氏が考案したコンベンションとして発表した。
ところが Lebensold 氏はそんなコンベンションは知らないと。
それならそれで、「Lebensohl 」と綴りを間違えて発表したくらいだから、
そのまま通してしまえというわけでして。
そういうことなら固有名詞ではないので 「lebensohl」 と、頭文字を小文字で
表記する方が正しいという意見もありまして。ちょっと情けない過去です。
変形(1)
伝統的なレベンソールは、 Lebensohl SLOW 。
W | N | E | S | |
2 | DBL | P | 3NT | | | |
|
は ストッパーが「無く」、
W | N | E | S | |
2 | DBL | P | 2NT* | P | 3 | P | 3NT | | | |
|
は ストッパーが「有り」ます。
FADS(Fast Auction Denies Stopper)とか、
SSS(Slow Shows Stopper)とか、
Slow Shows,Direct Denies とか、
SASS(Slow Arrival Shows Stopper)とか。
呼び名は様々。
問題は、「3NT」をビッドするとパートナーが反射的にパスをすることが多く。
ストッパーが無いから危ないじゃないか〜、ということです。
Lebensohl FAST はこの点を改良した取り決めで。
FASS(Fast Arrival Shows Stopper)とも。
W | N | E | S | |
2 | DBL | P | 3NT | | | |
|
は ストッパーが「有り」、
W | N | E | S | |
2 | DBL | P | 2NT* | P | 3 | P | 3NT | | | |
|
は ストッパーが「無し」です。
最近では LEB FAST しか知らない人もいるようです。
行き違いしないよう打ち合わせをして下さい。
応用(1)
W | N | E | S | |
1 | DBL | 2 | ? | | | |
|
この経過でもレベンソールを使ってみようと。
すなわち、
2NT = LEB
3
=
インビテーション
2NT経由3
=
競り合い
などのように、「2
→DBL→Pass→?」 と同じ仕組みを採用します。
同様に、
W | N | E | S | |
1 | DBL | 2* | 2NT* | | | |
|
2
=
のトランスファーレイズ
Cappelletti over one-of-a-major double(CAPP/1MX)と呼ばれる
コンベンションで、米国のマイク・カペレッティが発案者を名乗っています。
この経過でも 「2NT = レベンソール」 を使ってみようと。
また、
「2の代のメジャービッド状態」なので、LEB ON。
すぐの3
=
INV(ゲームインビテーション)
2NT経由3
=
COMP(コンペティション、競り合い)
などのように使い分けします。
この取り決めが有効なディールがありました。
2011年 モンタルト杯
ディーラ:East、ノンバル
W | N | E | S | |
| | P | P | 1 | DBL | 2! | 3 | P | 3 | P | 3NT | All | Pass | |
|
1
= 軽めのオープン。
2
=
の長い、弱い手
3
= ゲームインビテーション
3
=
ストッパー有り
3NT =
ストッパー有り
2個と
2個、または
2個と
1個
1個を負けて、ウィナーは9個です。
変形(2)
リオープン(Reopen)ダブル と、
リテークアウト(Re-takeout)ダブル に対して。
「スクランブリング(Scramblig)2NT」
W | N | E | S | |
1 | P | 2 | P | P | DBL | P | 2NT* | | | |
|
W | N | E | S | |
1 | DBL | 2 | P | P | DBL | P | 2NT* | | | |
|
いずれも「2の代のメジャービッド状態」です。
2NTは、長い方のマイナーを選べ、という意味で使われます。
変形(3)
レベンソールはパートナーに対して、「3
を言え」というコンベンションです。
W | N | E | S | |
1NT | 2 | 2NT* |
|
2NT = LEB
これをパートナーに対して、「長い方のマイナーを言え」という意味に使おうと。
すなわち2NTを、
「3
へのマリオネット(marionette)」ではなく、
「ピック・ア・マイナー(pick-a-minor)」の約束にする。
この取り決めは以前からありますが、発表はマイク・カペレッティが
米国ブリッジワールド誌2008年7月号に書いたのが始めてと思われます。
この「ピック・ア・マイナー」の取り決めが効いたディールがありました。
2003年 セクショナルゲーム
ディーラ:East、EWバル
2NT = Pick-a-minor
3
は 3メイク。
EW側は3
まで出来るようです。
ついでにブリッジ用語を。
トランスファー(transfer)は、別の特定のスーツの長さを表すビッド。
パペット(puppet)は、パートナーに対して、ハンドの持ち方に関係無く
特定のコールをすることを求めるコール。
マリオネット(marionette)は、パートナーに対して、最低限のビッドを
することを求めるが、パートナーはハンドによっては別のビッドをしても
構わないビッド。
応用(2)
昨今、1NTオープンに対してマイナーのオーバーコールが「ナチュラル」と
いうペアは少なくなっているようです。
ところが 「ドント(DONT = Disturb Opponent’s Notrump)」の手口は
以下のようで。
DBL = 何かの One-suiter
2
=
と何かの Two-suiter
2
=
と片方のメジャー
2
=
&
ビッドしたスーツと、ランクが上のスーツのTwo-suiterを表します。
これだとマイナースーツのオーバーコールと同じ状況になります。
例えば。
W | N | E | S | |
1NT | 2* | |
|
W | N | E | S | |
1NT | 2* | 2 |
|
2
=
競り合い
W | N | E | S | |
1NT | 2* | 3 |
|
3
=
フォーシング
W | N | E | S | |
1NT | 2* | 3 |
|
3
= キュービッド
問題はここです。
W | N | E | S | |
1NT | 2* | 2NT* | P | 3 | P | ? |
|
2NT = LEB
パスは、無い。
3
=
5枚、インビテーション
3
=
5枚、インビテーション
3
=
5枚、インビテーション
3NT = 点有り、
ストッパー有り
キュービッドを失っていることにお気づきですか?
「CUE = STAY」が使えなくなります。
対策は以下から選んで下さい。
(イ)2
のオーバーコールを「無視」する
(ロ)ネガティブダブルを使う
(ハ)4
をキュービッド(ステイマン)として使う
(ニ)3
をキュービッド(ステイマン)として使う
応用(3)
以下の経過では、
W | N | E | S | |
P | 1NT | 2 | ? | | | |
|
「2
」のビッドが、「
スーツ」のときも「
とマイナー」のときも、
スーツに対してレベンソールを稼働させます。
同様に以下の経過で、
W | N | E | S | |
1 | 1NT | 2 | ? | | | |
|
「2
」が
スーツを表すときには、1
オープンは「無視」します。
ストッパーの心配は無いからです。従って、1NTオープンに
「2
」オーバーコールが入ったときと同じ対処をします。
変形(4)
レベンソールには各種の変形版があります。代表的なものを挙げると。
Advanced Lebensohl
Transfer Lebensohl
Rubensohl
Rubinsohl
名前が違うだけで、中身はほとんど一緒。典型的な手口は以下のようです。
W | N | E | S | |
1NT | 2 | ? |
|
2NT =
へのトランスファー
3
=
へのトランスファー
3
=
へのトランスファー
3
= トランスファーキュービッド = ステイマン、4枚
有り
3
= 3NTへのトランスファー、ストッパー無し、4枚
無し
3NT = ストッパー有り
その他、ブリッジワールド誌2005年12月号と2008年7月号の記事に、
リバース・レーベンソールというか、Lhosnebel(Lebensohlの逆綴り)と
名付けられた新コンベンションが紹介されています。興味の有る方は
調べて下さい。優れたコンベンションですが、少々複雑。
それと、誰もコンベンションの名前を発音できないことが問題だそうです。