オークション中に長考したら妙なことになりかけました。
2013年 柳谷杯
ディーラSouth、ノンバル
Eastは3
のあとで1分ほど考えてから「パス」。本人は集中しているので
短時間に感じても、他の3人からは「長考」が明らかです。
Westはどうするか?
3
をパスする人も、ビッドを続行する人もいるでしょう。そこは各人の自由
です。しかしながら、普通ならパートナーの「長考パス」は、そこそこの点数
があることを示唆します。となるとビッドした方が有利ではないか?
駄目駄目。パートナーが長考したことを勘案するのは規則違反です。
じゃあどうしろと?
自分が正しいと思ったビッド(パス、ダブル)をします。
何やらディレクター騒ぎになりそうです。
で?
長考した側は不利な裁定を受けることが多いです。悪い結果はそのまま、
良い結果は下方調整。トラブルの種をまいたんだから仕方ありません。
実際の結果は 5
ダウン5! NS側としてはダブればよかったのですが、
プラス250点なら損は無いでしょう。
ここから本題。
Eastが長考したから、Westはビッドしたらいけないのではないか?
否。
その理屈でいうと、Eastはパートナーにパスして欲しいときには、
「わざと」長考をすればいいことになる。この種の裏技につけられた名前が
「ブライアーパッチクー(Briar-Patch Coup)」。
当然のことながら規則違反。
この手口を知らないディレクターも多いので要注意です。
実際のディールで、Eastは長考してパスしました。これによって、Westは
ビッドしにくくなっています。Westがビッドをしたら、パートナーの長考を
「利用した」との指摘を免れないからです。だからといってWestがパスを
したら、それもまたパートナーの長考に「影響を受けた」と指摘されかねま
せん。進むも地獄(かもしれない)、退くも地獄(かもしれない)。
困ったもんです。いや、困ったパートナーです。
Eastは、パートナーの
ボイドがわかるので、パートナーがもっとビッドし
そうだとわかります。結果的には3
にダブルをかけるのが良かったよう
です。長考はそれを考えていたのでしょう。3
xはふたつダウンして、
300点取れます。
規則書では「ヘジテーション」は「ブレークインテンポ(Break in tempo)」と
いう言葉が使われます。オークション中およびプレー中のテンポの乱れです。
ヘジテーションすること自体は規則違反ではありません。
パートナーがヘジテーションの影響を受けた可能性があると思われる行動を
取ることが規則違反です。「影響を受けた可能性がある」と思われるだけで
違反になることがつらいところです。
米国「ブリッジワールド」誌ウェブサイトの用語集では、
Briar-Patch Coup
illegally transmitting unauthorized information suggesting the
opposite of what one hopes will happen (such as by doubling
hesitantly with a clear-cut penalty double), in the hope that
partner will be influenced to do the opposite of what is suggested.
と解説されています。
ついでに。
「ソミネックスクー(Sominex Coup)」
「ソミネックス」は米国では有名な睡眠補助薬のようで。眠くなると。
昼下がり。対戦相手のビッドやプレーがあまりに遅いと眠くなりませんか?
考えるのがだんだん面倒になって。ディフェンスが粗雑になったりして。
上記のウェブサイトでは、
Sominex Coup
(slang) to take so long over an action that,whether by accident
or design,another player loses concentration.
と解説されています。心当たりありますか?