「ハンドのビジュアル化」。
正確には 「『ディール』のビジュアル化」。
または「ブリッジディールの視覚化、画像化、映像化」とでも言いましょうか。
枚数のカウンティングを視覚化する試みです。
例えば:
ディーラーEast
ノンバル
4
by S
O.L.
2
右手の2
オープンにどう対処するかは意見が分かれるでしょう。
テークアウトダブルか3
オーバーコールを選べば、最終的に4
になります。
オープニングリードは
2。右手は
Aを取って
を返し、
Kが勝ち。
のルーザーが1個は残りますので、
のルーザーを1個以内で済ませます。
ここで左右のハンドを画像化します。
テレビモニターを開く感じで。
ダミー:
74
K93
AJ105
9652
手元:
K8
A10652
KQ6
AJ3
こう見れば、左手の方が
が長そうであることは明らかでしょう。
したがって左手の4枚
に備えます。
先ず手元の
Aを取り、右手の
絵札シングルトンに備えます。
続けて手元からスモール
をリードして、ダミーの
9でフィネス。
右手の
絵札ダブルトンに取られたなら、
3-2の分かれで問題なし。
(実際の左手のハンドは:
J62
QJ87
93
K874 です。)
以下のようなプレーの問題は本によく出てきます。
N | S | | 2 | 2 | 2NT | 6NT | P | |
|
6NTにオープニングリードは
10。ウィナーは11個。
で4トリックを取れば6メイク。7メイクの可能性はありません。
したがって
を全勝するかどうかが焦点です。
全体の枚数配置を調べるために、早い段階で
をスモールでダックします。
そののちに、
、
、
を取ります。
「左手の
は4枚、右手の
はクィーンシングルトン、左手の
は2枚」
などとカウントするのですが。ここで左右のハンドを画像に出すと:
ダミー:
J5
A52
76542
AJ3
手元:
AKQ7
KQ103
A8
KQ6
右手に4枚
があることは明らかでしょう。
K、
Aの順に取りながら
左手のダブルトン
を奪い、必要とあらば右手のジャックをフィネスします。
(左手は:
10986
64
KJ1093
97 です。)
次のハンドでは、肝心なスーツの分かれが悪い場合に備えて、
周りのスーツの分かれを先に調べます。
ディスカバリー(Discovery)プレーです。
ビッド進行には芸がないですが、最終コントラクトは正しいようで。
リードが来ました。
スーツが走ればウィナーは余っています。
右手の4枚
「J975」は
Aを取ってから、ジャックのシンプルフィネスになります。
左手の
J975は手元の
Kを取ってから、ダブルフィネスになります。
スーツに着手する前に
、
と
を2枚ずつ取っても何の損も無いでしょう。
ダミーエントリーを1つと手元のエントリー1つは残すようにして下さい。
左右両側が
と
を2枚ずつフォローして、
は右手がシングルトンと確定したら。
こうやって見ると:
ダミー:
A52
A
AQ8642
AQJ
手元:
KQJ
K852
K103
K94
左右どちらに4枚
がありそうか明白でしょう。
[米国ブリッジワールド誌 2004年9月号参照]
このような映像化ができるかどうかは「練習」とか「訓練」でしょう。
ビッドに於ける要素は:
「知識」(約束、アグリーメント)が半分、
「判断」(ジャッジメント)が残り半分
ですが、
プレーとディフェンスに於いては:
「点数、枚数、ウィナーのカウンティング」が2分の1、
「手口」(知識、ロジック)が4分1、
「判断」(ジャッジメント)が残り4分の1
です。
カウンティングは必須ですが、勘定よりも視覚化を心掛けたらどうでしょうか。
ゲーム感覚の視覚化は、各種ゲームでこれまでにも研究があったようです。
将棋では、朝日新聞ウィークリー AERA(アエラ)2012年9月17日号に、
「天才たちの『脳内』パネル」という記事を目にしました。
副題は「羽生の頭の中で、将棋盤はどう再現されているのか」です。
羽生善治さんは「4分割の盤面が高速スライド」、渡辺明さんはダークグレー
の空間が広がる「暗黒星雲型」。その他、棋士によって「ファンタジー型」、
「盤面再現型」、「オールカラー超リアル型」などと名付けられていました。
詳しくは「将棋思考プロセス研究プロジェクト」で調べられているようです。
ブリッジに於いても同様な試みがあってもいいと思うのですが。
アルツハイマー予防に効果があることは日米で研究成果が出ています。
視覚化については「ボルス ブリッジ金言集(BOLS BRIDGE TIPS)」に
米国のグラノベッターの金言、
”Picture the Original Shape (Count the high cards,but try to
picture the original shape − as early as you can)”
というのがありまして。
「元々のハンドの形を目に浮かべよう」とでも訳すのでしょうか。
BOLS BRIDGE TIPSは、世界最古(創業1575年)の蒸留酒製造所の
オランダ「ボルス社(Bols Royal Distilleries Holland)」が1974〜76、
1987〜1994年とスポンサーになって、IBPA(International Bridge
Press Association)がブリッジ金言集を集めたものです。
Matthew Granovetter は米国の天才ブリッジ少年でエドガー・カプランの
愛弟子、米国「ブリッジトゥディ誌(ウェブサイト BRIDGE TODAY.COM)」
の主催者。というよりも、2008年の世界選手権で日本シニアチームが
優勝したときの決勝の対戦相手、米国チームの一員と言った方がなじみが
あるでしょうか。
この金言は1988年に選ばれたもののひとつで、もともとはディフェンスに
於いてディクレアラーのハンドを想像する試みです。興味のある方は
米国「ブリッジエース」のウェブサイト
BOLS Bridge Tips をご覧ください。