試合での典型的な「教科書プレー」のハンドの記録をとったことがあります。
そしたら、あるわあるわ。そのうちいくつかを紹介します。
まっさきに思い出すのは1995年の萩原杯。
第3セッション 7番ボード(ディールを回転)
![](s.png)
![](s.png)
ディーラーEastのパス、Southの1
![S](s17.png)
から始まって、コントラクトは4
![S](s17.png)
。
デイフェンスは
![C](c17.png)
を攻め続けます。
ディクレアラーは手元の
![D](d17.png)
を捨て続けて開幕3連敗。残りを10連勝です。
仮に2巡目の
![C](c17.png)
をラフするとコントラクトはダウン。
ところが3巡目の
![C](c17.png)
をラフすると結果的にはメイクするのが面白いところで。
![S](s17.png)
を4巡回収して
![H](h17.png)
を走ると、ディクレアラーは
![S](s17.png)
5+
![H](h17.png)
4+
![D](d17.png)
1で10個。
右手が
![H](h17.png)
をラフすると
![H](h17.png)
のウィナーが1個減りますが、その代わりに右手が
スローイン(throw-in)になって、
![D](d17.png)
Qが取れるようになるからです。
(
![C](c17.png)
の2巡目を見送って3巡目をラフする人も希有と思いますけど。)
実際の試合ではフライトAの全テーブルで4
![S](s17.png)
になりましたが、つくったのは
ご夫婦ペアの奥さんただひとりと記憶しています。
2008年 NEC杯
![](s.png)
![](s.png)
W | N | E | S | |
| P | 2![](s19.png) | 3NT | P | P | P |
|
ディーラーN
EWバル
ディクレアラーは
![S](s17.png)
リードを勝ち、手元から
![C](c17.png)
A、アナザー
![C](c17.png)
と出したので、
右手から再び
![S](s17.png)
を攻められてあっけなくダウン。
正しくは
![D](d17.png)
でダミーに入って、
![C](c17.png)
を引きます。右手がスモール
![C](c17.png)
なら手元で
カバー、右手が
![C](c17.png)
Qならエースで取って、手元から
![C](c17.png)
を負けに行きます。
いずれにしてもリードが右手に入らないので、
![S](s17.png)
のストッパーを堅持できます。
この手口は方々の本に出てきますが、新しいところでは以下のものが。
米国ブリッジワールド誌2012年8月号参照
![](s.png)
Southの2NTオープンから始まって、コントラクトは3NT。
![H](h17.png)
のリード。
右手は
![H](h17.png)
Aで勝って、
![H](h17.png)
Jを返します。ディクレアラーが
![H](h17.png)
Aをホールドすると、
左手は
![H](h17.png)
Qでオーバーテークして
![H](h17.png)
を攻め続けます。
実はもう手遅れ。
2巡目の
![H](h17.png)
をエースで勝ち、手元の
![C](c17.png)
絵札を取らずに
![D](d17.png)
でダミーに入って、
![C](c17.png)
を引きます。右手がスモールなら
![C](c17.png)
絵札で勝ち、再び
![D](d17.png)
でダミーに入って、
![C](c17.png)
を引きます。いずれにしても右手から
![C](c17.png)
Qが出てきたら、これに勝たせます。
左手にリードが入ることはありません。
手元から
![C](c17.png)
絵札を取ると、右手は
![C](c17.png)
Qを捨てる可能性があります。
また、
![H](h17.png)
Aをホールドすると、3巡目の
![H](h17.png)
のときに右手が
![C](c17.png)
Qを捨てます。
(ディクレアラーは
![H](h17.png)
の分かれが4333なら、
![C](c17.png)
3-2の分かれで簡単にメイク。)
(ディフェンス側は
![H](h17.png)
の3巡目で、左手が
![C](c17.png)
にエントリーらしきものがあることを
示唆できます。)
2008年 夏季全米ナショナル・スイスチーム戦
![](s.png)
![](s.png)
ディーラーS
ノンバル
4
![C](c17.png)
はスプリンターレイズ。オープナーの最初の「パス」はフォーシングで、
オフェンスに前向きなハンドを表しました。4NTはキックバック適用で
![S](s17.png)
Aの
キュービッド(記事
MINORWOOD参照)。オープナーの次の「パス」も
フォーシングで、スラムに前向き。レスポンダーは願ったり叶ったりでしょう。
オープニングリードは
![C](c17.png)
A。
ディクレアラーのラリー・コーエンはトランプを狩り集めながらマイナースーツ
をストリップアウトしたのち、手元とダミーの両側からスモール
![S](s17.png)
を出しました。
![S](s17.png)
3-2の分かれはもとより、
![S](s17.png)
Q/J/10/9 いずれのシングルトンでも
ディフェンス側がスローイン(Throw-in)になってメイクです。
(このプレーの他に、
![S](s17.png)
AKを取りながら
![C](c17.png)
を掃除して、
![D](d17.png)
Jで右手にスローイン
するプレーもあります。また、
![C](c17.png)
Qで右手にスローインするプレーも成功します。)
同じような手口は方々で紹介されています。そのうちひとつを。
「カード プレー テクニック」 ビクター・モロー、ニコ・ガードナー共著(1971年刊)
![](s.png)
Southの1
![S](s17.png)
オープンから始まって、コントラクトは6
![S](s17.png)
。
![H](h17.png)
Qのリード。
![H](h17.png)
Aで勝ち、
![S](s17.png)
を回収しながら、
![D](d17.png)
を掃除(エリミネーション)。その後、手元の
![C](c17.png)
絵札をひとつだけ取ってから、
![H](h17.png)
で負けに行きます。実際のディールでは、
右手が
![H](h17.png)
を取ったらラフ&スラフ(ラフ&ディスカード)、左手が
![H](h17.png)
を取ったら
![C](c17.png)
の打ち込みになります。
このプレーは
![C](c17.png)
3-2の分かれのときと、
![C](c17.png)
J/10/9 シングルトンのときに
成功します。また、プレーの早い段階でダミーの側からスモール
![C](c17.png)
を引いて
おくことが勧められます。右手が「
![C](c17.png)
J109x」から高い
![C](c17.png)
をスプリットする
可能性があるからです。
2008年 横浜インビテーショナル
![](s.png)
Northの1
![C](c17.png)
オープン、右手の1
![S](s17.png)
オーバーコールから始まって、Southの4
![H](h17.png)
。
ディフェンスは
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を2個取ったのち、トランプにシフトします。
ディクレアラーはトランプを狩り集めた後、
![C](c17.png)
AKラフと進め、
![H](h17.png)
でダミーに入って
4枚目の
![C](c17.png)
を引きます。右手がフォローしたら、手元の
![D](d17.png)
をルーザーオンルーザー。
右手がスローインになります。
この手口も前述の「カード プレー テクニック」に出ています。
2008年 日本リーグ
![](s.png)
Southの1NTオープンから始まってSouthの4
![H](h17.png)
。オープニングリードは無難な
スモール
![D](d17.png)
。ディクレアラーは
![D](d17.png)
A、
![C](c17.png)
をクィーンでフィネスののち、
![C](c17.png)
A、
![C](c17.png)
ラフ。
引き続き
![S](s17.png)
AK、
![S](s17.png)
ラフ。
![C](c17.png)
の4枚目を手元でラフ。ほどなく5メイク。
![C](c17.png)
フィネスが成功した時点でサイドスーツのウィナーは6個。トランプで4個を
取れば10トリックに達するのでクロスラフしました。
左手はがっかりかも。
![C](c17.png)
Aのときにキングを放出したらディフェンス側にチャンス
があります。
2008年 横浜インビテーショナル
![](s.png)
Northの1
![C](c17.png)
オープン、1
![D](d17.png)
レスポンスから始まって、ほどなくSouthの6
![D](d17.png)
。
オープニングリードは無難そうに見える
![S](s17.png)
10。ダミーからはジャック。
右手は「サード ハンド ハイ」?
右手からは以下のように見えています。
(ダミー)
![S](s17.png)
KJ85 (右手)
リード
![S](s17.png)
10
![S](s17.png)
Q432
ディクレアラーの手元に
![S](s17.png)
Aがあることは明白でしょう。
![S](s17.png)
Aシングルトンのときには、
![S](s17.png)
Qは出さない方が良い。
![S](s17.png)
Aダブルトンのときには、
![S](s17.png)
Qを出しても3トリックは取られてしまう。
![S](s17.png)
Aトリプルトンのときには、
![S](s17.png)
Qを出すと4トリックを取られてしまう。
以上から右手は
![S](s17.png)
Qをダックします。
実際の準決勝では両テーブルとも
![S](s17.png)
Qを出してしまって6メイク。
それさえ出さなければ、ディクレアラーは
![D](d17.png)
と
![C](c17.png)
に1個ずつルーザーが出ます。
「教科書プレー」はたくさんあるのですが、「教科書ディフェンス」はあまりなくて。
平凡にダウンすることが多いせいでしょうか。
あるブリッジの英語本の最終章に。プレーの本ですが、著者自身が実際に遭遇
したのは唯一、'せこい'ディセプションのハンドだけだという「落ち」です。いま考え
てみると、これはよく考えられた「オチ」だったようです。フランク・スチュワート著
「コントラクト・ブリッジ・クイズブック」(1986年刊)かと思いましたが、違いました。
このような「オチ」を思いつくのはエドウィン・カンターかもしれません。実際の試合
では、本に出て来るようなプレーのハンドはけっこう頻繁に出てくるようです。