アラートは簡単に言うなら、
「対戦相手に対して。特殊な意味があります。注意して下さい」 ということです。
逆に言うなら、
対戦相手のふたりともが「そんなの当たり前」とか「アラートされなくても判ってた」
というときにはアラートし忘れても支障がないということで。
「アラートしないの?」などと揚げ足を取るよりは黙ってる方が品がいいと。
「ダブルとリダブル」、「キュービッド」、「リードとシグナル」はアラート不要です。
パートナーのビッドをアラートします。
まれにパスをアラートすることもあります。
自分で自分のをアラートするのは駄目。
パートナーがアラートし忘れてもあわてないで。
アラートカードは できれば正面に向けて。
ビッドカードの周囲10センチくらいに出して。
左右の対戦相手が気付いたか確認して下さい。
JCBLのアラート規則は3本立て:
「プリアラート」、「アラート」、「ディレードアラート」。
JCBLアラートチャート(PDF 283kb)。
面倒でしょうが一度くらいは見ておいて下さい。ざっとでいいですから。
アラート必要か不要かわからなかったら、アラートした方がいいです。
アラート不要とわかったときに、大抵は 「あ、そうですか」で済みますから。
アラート必要とわかっていたら、何の意味か忘れたときにも、アラートをします。
もし説明を求められたら、「自信が無い」と答えて。ディレクターが対処します。
パートナーがアラートした、しないは関係無しで。パートナーがアラートすべき
コールをアラートしなかったときでも、自分がアラートすべきものはアラートします。
テーブル上の質問と回答について誤解が多いのは、「実際のハンドに何を
持っているか」を答えなければならないと思われていることです。
パートナーが実際に何を持っているかなんて、見なければわからないわけで。
質問は 「ペアの約束はどうなっていますか?」。
回答は 「ペアの約束はこうです」、「ペアの経験上はこうです」。
例えば、
と進んだときに、ディフェンス側が聞く。
質問:「4NTは何ですか?」
回答:「エースアスキングです」
質問:「5
の意味は?」
回答:「エース2枚です」
では実際のハンドがエース3枚だったらどうなるか?
「ペアの約束」は正しく説明された。
エース3枚なのに、2枚とビッドしたことは?
ビッドの失敗です。
ビッドを失敗したことを他の人は知っているか?
誰も知らない。
規則違反は?
無い。
あたり前でしょう。
同様に、
プレーが始まり、ディクレアラーがディフェンス側に尋ねる。
質問:「リードは?」
回答:「普通です」
何が「普通」なのか?
「パートナー間の約束と経験」は説明できるけど。
「実際に何を出しているか」はわからない。
本人しか知らない。
オープニングリードの出番。
を出すなら
2ですが、パートナーが勝つと、
を返して来ます。
本命は
なのですが。
そこで見つくろって
8をリードします。
ディクレアラー質問:「リードは?」
ディフェンス側回答:「普通です」
規則違反は?
無い。
アラート規則は変わります。国によっても違います。
JCBLでも十数年前まで、ネガティブダブルにはアラートが必要でした。
英国(English Bridge Union)ではアンユージュアル・NTオーバーコールは
アラートが必要です。
米国ブリッジワールド誌2012年7月号の論説に以下のような話が出ています。
ある取り決めにアラートが必要かどうかを試合前にディレクターに尋ねた。
ディレクターはアラート不要と答えた。
試合中にその取り決めが出てきた。
アラートをしなかった。
対戦相手がディレクターを呼んだ。
本当はアラートが必要だった。
相手はスコアの損害補償を求めた。
実際にあった話なのでしょう。
というのは、米国のウェブサイト
ブリッジウィナーズの投稿に出ているからです。
ペギィ・カプラン(PEGGY KAPLAN)の5月11日付けのコメントは以下のとおり。
As long as we have a system that is so complex and detailed
that some of our NABC(North American Bridge Championship)
director’s aren’t certain what current rules are,then surely we
should have some form of oversight.
ナショナルディレクターにさえ規則が明確でないなら何かがおかしいのであろう、
というくらいの内容です。
ディレクターにとってさえ規則が紛らわしいなら、プレイヤーが理解していると
思う方が間違っているわけで。流行りのコンプライアンスみたいな話です。
その米国ブリッジ連盟(American Contract Bridge League)のアラート規則は
「ACBL アラートチャート」(PDF 335kb)。
以前は「スペシャルアラート」という制度がありましたが撤廃されて、今では
Announcement、Pre-Alert、Immediate Alert、Delayed-Alert の4本立て。
ややこしい。
JCBLに於いても、
W | N | E | S | |
| 1 | P | 4 | | | |
|
で4
スプリンターは「アラート必要」。
ところが、
の4
スプリンターは「アラート不要」。
というのは、オープナーのリビッド以降で3NT以上は「ディレードアラート」に
なるからです。3NT以上はいつでもアラート無しにした方がいいのでは?
インターネット時代以前のWBF(世界ブリッジ連合)のアラート規則はほんの数行。
「対戦相手が理解できないと思われるコールはアラートすること」
のような内容でした。世界選手権のアラート規則がこれだけ。
時代が代わって今は、
「WBF アラーティングポリシー」(PDF 50kb)。
それでも6条項に収まっています。自分の面倒は自分で見ろということです。
興味のある方は英国ブリッジ連盟(English Bridge Union)の
「EBU アナウンシング及びアラート一覧」(PDF 90kb)も見てみて下さい。
所変われば品変わる、です。
香港のアンソニー・チン、APBF(Asia Pacific Bridge Federation)主任
トーナメントディレクターが言っていました。
「アラートは奇妙(ridiculous)な規則だ。
あるときは『アラートをしなかったが、対戦相手は聞けば判るはずだ』と不問
に付し、あるときは『アラートをしなかったから、対戦相手は判らないはずだ』
と違反に問う。明らかにダブルスタンダード(二重基準)だ。」
米国のマイケル・ローゼンバーグに言わせると、
「試合毎に『標準ビディングシステム(その試合でのスタンダード)』を定めて、
それに沿わない取り決めはアラートするということにすればいい」。
きりがありません。
ついつい長話になってしまいました。